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ホップ
Humulus lupulus LINNE
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クワ科
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雌花
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毬果
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ヨーロッパ南部原産といわれていますが,古い時代からビール醸造の原料として利用されているため,北半球の冷涼な地域に広く生育している雌雄異株のつる性の多年生草本植物です。日本へは明治9年(1876),ビール醸造を目的に雌株を北海道へ導入したのが最初といわれています。そのため雄株を目にする機会はほとんどありません。現在は北海道や東北地方などの冷涼な地域で栽培しています。茎は長さ10mくらいに生長し,多数の小さな刺を生じています。葉は先端が尖り,卵状または3〜5裂し,変化に富んでいます。雌花序は花柄の先端に多数つき,毬果は松かさ状になります。
和名は英語表記のHopをそのまま用いたものです。このHopとは,ホップの栽培が盛んな中世の面影を残しているベルギーのポペリンゲ(Poperinge)という町名に由来しています。別名をセイヨウカラハナソウともいいますが,同じ属で日本に自生しているカラハナソウから名づけられました。薬用としては淡緑色で鱗状の苞葉に包まれた毬果を用い,中国では?酒花といって健胃薬,利尿薬としますが,一般的にはビールを醸造する際の風味づけに添加するというイメージが強いようです。ビールを飲むと,何故かトイレに行く回数が多くなりますが,これは単に水分の摂取だけではなく,ホップの利尿作用に起因しています。
ビールは大麦とホップを用いて醗酵させたアルコール飲料です。その歴史は大変古く,諸説ありますが,一説によれば紀元前8,000〜4,000年までさかのぼるといわれています。紀元前8,000〜4,000年といえば,世界四大文明の一つであるメソポタミア文明などが栄えた時代です。当に人類の歴史とともに親しまれてきた飲み物といえます。初期のビールは粉末にした大麦を水で練り,パンのように焼いてから水を加えてアルコール発酵させたものでした。初めて,ホップを利用するようになったのは11世紀頃のドイツといわれ,風味づけのために添加したようです。ホップには独特の風味だけではなく,雑菌の発生を抑制するという作用があります。現在のように衛生的な環境で醸造することが困難であった時代には,とても都合のよい添加物であったに違いありません。バッカスの祝福に感謝したのではないでしょうか.その後,その風味が広く愛され,ドイツだけではなく世界各地のビールにもホップを添加するようになりました。(磯田 進・鳥居塚和生)
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