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インドジャボク
Rauwolfia serpentine BENTH. ex KURZ
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キョウチクトウ科
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花
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果実
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−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
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インドから東南アジアにかけての熱帯アジアに分布し,ジャングルなどの林床に生育している常緑の低木です。インドジャボクは耐寒性がないため,日本においては薬用植物園の温室などで植栽されることが一般的です.(独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センターでは研究用に露地栽培を行っていますが,栽培地は種子島研究部という温暖な場所です。樹高は0.3〜1.5m,葉は上部で3枚が輪生または対生し,葉身は楕円状で先端は尖っています。花は筒状で内面は白色,外面は淡紅色を呈し,枝の上方に集散状につきます。気温がコントロールできる温室の中では,一年中開花します。果実は球状で,光沢のある黒紫色に熟します。
和名の「印度蛇木」は,根の形状がヘビに似ていることに由来する説と,古来インドで毒ヘビによる咬傷の治療薬として根を用いたことに由来する説などがあります。学名の種小名もヘビを意味するserpentineが用いられています。因みに属名のRauwolfiaは,医師で植物学者のドイツ人であるRauwolfを記念して名づけられています。漢名は同様に「蛇根木」,英語名もSerpentine Tree(ヘビの木)と表記します。生薬名はラウオルフィアといいますが,日本では生薬としてそのまま用いることはほとんどありません。根に含まれている成分を精製単離し,血圧降下薬や精神安定薬,鎮静薬,抗不整脈薬の製剤として利用しています.
本植物はあまり馴染みのない熱帯植物ですが,現在100種類ほどが知られています.インドの伝統医学であるアーユルヴェーダ医学では,毒ヘビに咬まれた際の解毒薬や精神病の治療薬として利用しています。熱帯アメリカのグアテマラにおいても近縁種が分布していますが,アーユルヴェーダ医学と同様に毒ヘビの解毒薬として利用しています。含有する成分は,共に現在においても人類に多大な恩恵を与え続けていますが,両地域は距離的にも遠く離れており,その経験や知識など,お互いに共有していたとは考え難く,独自に見いだされたと考えるのが妥当だと思います。偶然といってしまえば簡単ですが,科学的な知識や情報伝達が現在ほどではなかった昔を思うと,人類が持っている洞察力や英知のすばらしさに敬服してしまいます。(磯田 進・鳥居塚和生)
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