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今月の薬草
チョレイマイタケ
Polyporus umbellatusFRIES ( サルノコシカケ科 )
チョレイマイタケ Polyporus umbellatus Fries (サルノコシカケ科)子実体
子実体
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 ブナやナミズナラ,カエデなどの夏緑広葉樹の根に寄生するキノコの一種で,子実体は初夏から秋にかけて菌核から生じ,淡黄褐色の小さな傘が集まっているように見えます。そのため学名の種小名も傘を意味するumbellatusが用いられています。裏面は白色で,小さな管穴状になっています。菌核は浅い地中に形成し,形状は不規則で表面は黒褐色で著しい凹凸がありますが,生育環境がよければその凹凸は少なくなるということです。また菌核の内部はきれいな白色を呈しています。分類学的には食用にするマイタケと同じマイタケ属に属する説と,チョレイマイタケ属として独立させる説があり,その分類学的な帰属は研究者によって異なっています。
 和名は菌核を生薬のチョレイ(猪苓)として利用し,子実体の形状が食用とするマイタケに類似するところから名づけられました。因みにチョレイ(猪苓)とはイノシシの糞を意味し,菌核の形状に由来しています。またマイタケはその美味しさから,山中で発見すると舞い踊るほど嬉しくなるということから漢字で舞茸と表記します。生薬のチョレイ(猪苓)は単独で用いることはなく,利尿薬とみなされる五苓散や猪苓湯などの漢方処方に配剤されています。
マイタケは天然ではとても珍しく,幻のキノコともいわれています。しかし現在は,ミズナラやコナラの幹を利用した原木栽培やオガクズによる菌床栽培したものが店先に並び,幻のキノコも手軽に味合うことができるようになりました。一方,菌核を生薬として利用するチョレイマイタケも容易に目にすることが難しく,生薬学を専門とする先生方でも直接,生の子実体を目にされた方は少ないということです。中国などから輸入する生薬のチョレイは,菌核だけで子実体は含まれておりません。
 ところが,幸いにも近くの林で子実体を発見する機会に恵まれました。早速,写真を撮り標本を作成しました。また,どの様な味がするのだろうと思いその一部を賞味したところ,歯ごたえが少し硬い点を除けばマイタケに勝るとも劣らない風味があり,貴重な自然の恵みを味わった数少ない経験者の一人と自負しているところです。なお,標本は昭和大学旗の台キャンパスの生薬展示室に展示しておりますので,興味のある方は是非ご覧頂けたらと思います。(磯田 進・鳥居塚和生)

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