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今月の薬草
キササゲ
Catalpa ovata G.DON ( ノウゼンカズラ科 )
キササゲ Catalpa ovata G. Don (ノウゼンカズラ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中国原産。各地で観賞用または薬用として栽培する落葉高木です。時には河岸などに野生化していることもあります。樹高は10mくらいになり,若い枝は腺毛を生じますが,後に無毛となります。葉は対生し有柄,葉身は広卵形で大きく,浅く3〜5裂しています。花は漏斗状で黄白色,内面に紫褐色の斑点を生じ,枝の先端に円錐状について夏に咲きます。果実は30cmくらいで細長く,房状について垂れ下がっています。種子は扁平で長楕円形,両端に糸状の長い毛が密生しています。また果実は,落葉した晩秋から初冬にかけても枝についています。
 和名は果実がマメ科のササゲに似て細長く,木に生じることから名づけられました。中国では「梓」と表記していますが,日本ではカバノキ科のアズサ(ミネバリ)に当てています。そのため本来神事などに使用される梓弓はアズサ(ミネバリ)を用いるのですが,しばしば誤ってキササゲと紹介されていることもあります。日中間における同名異物の代表的な例といえます。
薬用には緑色からやや褐色を呈した頃の果実を用います。乾燥させると先端がやや割れ,種子がはじけ出す程度の果実が良品といわれ,全体が割れて種子が飛散したものは生薬としては適していません。生薬名をキササゲといい,頭痛や眩暈,眼の充血の改善を目的とした漢方処方に配剤されています。また民間薬として,尿量が減少したときの利尿薬とします
 徳川家康は大の薬草好きといわれています。そのためでしょうか,各地の家康所縁の神社や仏閣,植物園などには,キササゲが植栽されています。その一つ。上野東照宮拝殿横には,樹齢300年といわれる老木が保存されています。また東京大学大学院理学系研究科附属植物園(通称小石川植物園)は,江戸時代,徳川幕府の薬園として知られていますが,明治4年の植栽植物に関する調査資料にも栽培していたとの記録が見られます。昔からカミナリ除けの樹木として知られていますが,樹形から避雷針的な効果があるとは思えません。おそらく重要な薬木として利用されていたため,伐採を戒めるためにカミナリ様の名を拝借したのではと想像します。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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