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今月の薬草
トウモロコシ
Zea mays LINN. ( イネ科 )
トウモロコシ Zea mays LINN. (イネ科)雌花序
雌花序
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中央アメリカから南アメリカ北部原産。世界各地で食糧や家畜用飼料,アルコール原料などを目的に栽培されている一年生草本植物です。日本へはポルトガル人によって安土桃山時代の天正7年(1579)に渡来しました。しかし農作物としての本格的な栽培は,明治時代に入ってから北海道で始まりました。原産地は暑い中米や南米北部ですが,栽培には北海道のような冷涼な気候が適しているようです。草丈は1〜3m,花は夏から秋に咲き,雄花序は茎の先端に,雌花序は葉の基部につけます。果穂は円柱状で,その先端からヒゲ状の雌しべの先端を出しています。
 和名のトウモロコシは唐モロコシの意味があります。当時は唐(中国大陸)から新しい文化を取り入れ,また多くの産物を輸入していたため,例えポルトガルを経て渡来したとしても,外国より渡来したものに唐と名づけることも珍しくはありませんでした。薬用には,種子のデンプンや胚芽の脂肪油,果穂に生じるヒゲ状の雌しべを用い,それぞれトウモロコシデンプン,トウモロコシ油,ナンバンモウ(南蛮毛)といいます。トウモロコシデンプンはデンプン原料や製剤の賦形剤,トウモロコシ油は製剤の基材や食用油,ナンバンモウは民間で利尿薬として利用します。
 トウモロコシは古くから食用として利用し,イネやコムギとともに世界三大作物の一つに数えられていています。最も一般的な食べ方は完熟した粒を粉にして練った後,薄く延ばしてパンやお煎餅のように焼き,野菜などと一緒に食べる料理です。日本においても渡来当時は,製粉後,餅などに加工し食べていたようですが,現在の日本ではやや未熟なものを茹でたり,焼いたりして食べる嗜好品的な食べ方が主流で,その独特な風味は夏の風物詩ともなっています。
 私(磯田)が住んでいる富士山北麓は高原のため,美味しいトウモロコシの産地として知られています.しかし,大きさやツブの不揃いだけで規格外品とされるトウモロコシが出ることがあります。生産者の中には,このような規格外品を粒だけおろし金で擦り,好みによって裏漉しして皮などを取り除きますが,これに牛乳を加えて塩とコショウで味を調えたコーンスープを食している方がいます。何度かご馳走になったことがありますが,その味は三ツ星印の有名レストランに負けない美味しいコーンスープに仕上がります。当に生産者が考案したエコの逸品といえる味です。 (磯田 進・鳥居塚 和生)

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