社団法人日本薬学会 The Pharmaceutical Society of Japan 日本語 English
サイト内検索 byGoogle

今月の薬草
ガジュツ
Curcuma zedoaria ROSCOE ( ショウガ科 )
ガジュツ Curcuma zedoaria ROSCOE (ショウガ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 インドやヒマラヤ南部原産の多年草で,高温,多湿の地域に生育しています。日本でも種子島や屋久島,沖縄などで,薬用として栽培しています。草丈は1m,葉は大きく70cmくらいになり,主脈に沿って紅紫色を帯びる部分があります。根茎はよく肥大,分岐し,内部は淡青色を呈し特有の芳香があります。花序は晩春から初夏にかけて根茎から直接出てきます。下部の苞は緑色ですが,上部の苞は紅紫色を帯びています。花は漏斗状で淡黄色,各苞の基部から一つ出します。果実は,熱帯植物であることから日本では結実しないため,栽培はすべて根茎を種芋としています。そのため形態的な変異はほとんど見られません。
 和名のガジュツは,生薬名の莪朮を音読みしたものです。しかし中国の古い時代の本草書に基原の解説は見られるものの,莪朮の語源については解説がなく定かではありません。日本への渡来は江戸時代の享保年間(1716〜36)といわれています。別名を紫ウコンといいますが,これは根茎の内部が淡青紫色を呈し,根茎の内部が黄色いウコンと同じ仲間であるところから名づけられました。薬用には根茎を用い,芳香性健胃薬とします。またインドシナ半島では,柔らかい若芽を野菜として利用しています。
 ショウガ科植物は熱帯地域を中心におよそ1100種が知られており,観賞用に栽培されるカンナや果物のバナナなどと近縁関係にあります。一般の植物園や薬用植物園を訪れる機会がありましたら,それぞれの花を観察してみてください。花の大きさは異なりますが,意外に似ていることに驚かれることでしょう。ガジュツ(Curcuma 属)の仲間には,カレー粉などの黄色食品色素として,また健康食品として人気のあるウコンをはじめとして,根茎や芽生えを香辛料や野菜として利用する種類も多く各地で栽培されています。また穂状の花穂はとてもきれいで長持ちするところから,最近は観賞用として楽しまれる方も多くなりました。このように本種の仲間は医薬品や健康食品として,私たちの健康維持に役立つばかりでなく,食品色素,染料,食材や切り花などにも利用され生活に潤いを提供しています。(磯田 進・鳥居塚 和生)

< 戻る

公益社団法人日本薬学会 (The Pharmaceutical Society of Japan)
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷 2-12-15 お問合せ・ご意見はこちらをクリック