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今月の薬草
クララ
Sophora flavescens AITON ( マメ科 )
クララ Sophora flavescens AITON (マメ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 本州以南の各地に分布し,日当たりのよい原野や草原などに生育する多年生草本植物です.草丈は1.5mくらい,根はやや肥大し強い苦味があります.葉は奇数羽状複葉,小葉は狭楕円形からひ針形です.花は淡黄白色で茎の先端に多数つき,初夏から夏に咲きます.また稀に紫色を帯びることもあります.果実は細長く,ところどころ括れていることがあり,成熟しても開裂しません.種子はやや球状で褐色を呈し,4〜5個入っています.
 和名は,根をかじると目がクラクラするほど苦いことから名づけられました.また別名をクサエンジュともいいますが,これは中国原産でつぼみを薬用とし,街路樹として植栽されている同じ仲間のエンジュの葉によく似ていることから名付けられたものです.
クララは根を薬用に用い,通常は外側のコルク層を取り除いてあります.生薬名をクジン(苦参)といい,苦参湯(くじんとう)などの漢方処方に配剤されるほか苦味健胃薬,皮膚疾患用薬として用いますが,作用が激しいため素人が安易に利用する薬草ではありません.なお以前には煎液を家畜などの農業用殺虫剤として利用することもありました.
 植物の用途は,食品や薬用は勿論のこと染料など多方面に渡り,中には思いもかけない利用方法もあります.クララは前述のように漢方処方に配剤され,苦味健胃薬や農業用殺虫剤として利用される薬用植物ですが,平安時代には茎の繊維を和紙の原料として利用してしたということが知られています.「延喜式」(927年)によると,アサやガンピなどと一緒にクララも製紙原料として利用していたとの記録が残されています.当時は苦参紙と呼ばれていたようですが,残念なことに現存しているものはなく,幻の和紙といわれています.クララには殺虫成分を含んでいるため,虫による食害によって消滅してしまったとは考え難く,特殊な用途のみに使用されたことが想像されます.(磯田 進・鳥居塚 和生)

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