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今月の薬草
トウキ
Angelica acutiloba KITAGAWA ( セリ科 )
トウキ Angelica acutiloba KITAGAWA (セリ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 本州の中北部に分布し,各地で薬用を目的に栽培されている多年生草本植物です.多くの薬草園などでも栽培されています.草丈は40〜90cm,株全体に特有の香りがあり,傷つけるとその香りは更に強くなります.根茎は太くて短く,根は肥大し多数の側根を生じます.葉は羽状に深く切れ込んで表面は光沢があり,長い柄の基部は茎を抱くように包み込んでいます.各裂片は細長く,葉縁にはきょ歯があり,先端は尖っています.花は白色で小さく,複散形状に多数ついて初夏から夏に咲きます.果実は長楕円形で,熟すと2つに分離します.
 和名のトウキは漢名の当帰をそのまま当てたものですが,中国産の唐当帰Angekica sinensisとは別種になります.薬用には根を用い,生薬名もトウキ(当帰)といいます.冷え性や血液循環の改善や婦人科疾患の治療に用いられることが多い当帰芍薬散をはじめ,多くの漢方処方に配剤されています.またその香りを楽しんだり,保湿効果を目的として入浴剤にも用いられています.
 近年,健康に気を配っている方が多くなってきました.ルームランナーや自転車エルゴメーターなどが設置されているスポーツジムに,通われるなどする方も多いと思います.また医食同源という言葉も一般的に耳にするようになり,健康の基本である日々の食事にこだわりを持たれる方も同様に多いことと思います.
 さて医食同源と密接な関係にあるのが薬膳料理ですが,その中でもサンゲタン(参鶏湯)は人気の薬膳料理の一つといえます.韓国旅行をされた時などに,賞味されたことがあると思います.濃厚なスープと風味,一度口にされた方ならその美味しさの虜になってしまったに違いありません.このサンゲタンは鶏鳥や薬用人参,餅米,大棗(ナツメ),ニンニクなどが入っているのですが,実はここに当帰が入っています.当帰を加えてじっくりと煮込んだ料理なのです.美味しさだけではありません.食後の満足感とともに,何か血液の流れも良くなり元気になってきたような気持ちになるから不思議です.当帰はサンゲタン(参鶏湯)の薬膳としての効能や風味の引き立て役として,なくてはならない素材といえるでしょう.(磯田 進・鳥居塚 和生)

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