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今月の薬草
メハジキ
Leonurus sibiricus LINNE ( シソ科 )
メハジキ Leonurus sibiricus LINNE (シソ科)
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本,朝鮮半島,中国に分布し路傍や原野に生育する2年生草本植物です。茎は四角く草丈は通常1mくらいですが,時には2mに達することもあります。最近は北アメリカにも帰化しているようです。株全体に白毛を密生させ,根生葉は卵状心臓形で長い柄をつけていますが,花をつける頃には枯れてしまいます。茎につく葉は深く羽状に裂けています。花は淡紅色で葉の基部に数個ずつ段状につけ夏から秋に咲きます。
和名のメハジキは茎を短く切って目に挟み,瞬きさせて遠くまで弾き飛ばす子供たちの遊びに由来し「目弾き」の意味があります。薬用には開花期の地上部を用います。生薬名をヤクモソウ(益母草)といい,漢方処方では芎帰調血飲や芎帰調血飲第一加減といった,産後の体力低下や月経不順などの改善を目標とした処方に配剤されています。
 植物の名称は,花や葉,草丈,香り,味などその特徴や用途によって名づけられることが多く見られます。また薬用効果を植物名や生薬名の由来とするものも多くあります。たとえば,効果がたちまち現れるのでゲンノショウコ(現之証拠)であったり,毒を消すことからドクダミ(毒矯み)であったりします。錨の形をしたイカリソウを基原とする生薬は,精力絶倫の羊が食していたという言い伝えによりインヨウカク(淫羊藿)といわれます。ヤマノイモやナガイモを基原とするサンヤク(山薬)も,まさに山に生えている薬との意で名付けられています。
この益母草もその一例といえる生薬です。中国の古い医学書によれば益母草は,「血を行らせ血を養い,新血を損なわず,瘀血(オケツ)を滞せず,血の聖薬であり,同時に妊婦に伴う気の不順による諸症をよく整える」というように,まさに母親に益するという,その効果から名づけられたものです。
われわれは親から名前を授かっています。世の常として親は子供の誕生に大きな祝福と期待を込めて名前を付けています。われわれ一人一人がその名に恥じない人生を歩んでいくことも大事かなと,改めて命名の妙に思いをはせてしまいました。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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