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今月の薬草
オタネニンジン
Panax ginseng C.A.MEYER ( ウコギ科 )
オタネニンジン  Panax ginseng C.A.MEYER (ウコギ科)花 オタネニンジン  Panax ginseng C.A.MEYER (ウコギ科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中国東北部から朝鮮半島原産の多年生草本植物です。日本では主に長野県や福島県,島根県などで栽培が行われています。根は肥大し茎は直立しています。葉は掌状複葉で,数枚輪生しています。花は散形状につき淡黄緑色で小さく,初夏に咲きます。果実は夏に紅熟します。
 和名は江戸時代に幕府の御薬園で栽培が成功したため,栽培に当たり種子を幕府より拝受されたことから名づけられました。そのため「御種人参」の意味があります。ニンジンは漢名をそのまま用いたもので,古来より人間の形に似ている根は,薬用効果が強いと信じられていたことに由来しています。また朝鮮半島から輸入していたため,一般的には朝鮮人参と呼ばれています。薬用には根が使われ,生薬名はニンジン(人参)といいます。保健強壮薬を目的とした漢方処方に多く配剤されています。
 今から1300年くらい前の飛鳥時代から奈良時代に,薬用として渡来したといわれ,奈良東大寺の正倉院には,当時の人参が今でも保存されています。保存されている人参を調査,研究したところ,有効成分はほとんど変質していないことが分かりました。これは有効成分が化学的に安定していることと,特殊な構造で知られる正倉院の校倉造りが幸いしていたということです。
 一般に「ニンジン」といえば野菜のニンジンを思い浮かべる方も多いと思われます。野菜のニンジンはセリ科の植物でヨーロッパ原産といわれます。日本へは東洋系品種は江戸時代に渡来し,西洋系品種は明治初期に導入されています。最近は,生でも美味しい西洋系品種が好まれているようですが,京料理などには東洋系品種が欠かせないということです。さて,こちらは根の形状がオタネニンジンとよく似ていたため,初めはセリニンジンと呼ばれていたということです。その後,いつしかセリが省略され単にニンジンと呼ぶようになり一般化しました。野菜のニンジンは薬用ニンジンと比べ新参者ということになります。「ニンジン」と言われたときに,オタネニンジンが思い浮かぶようであれば,生薬や漢方薬に関心がある方ということが出来るかもしれません。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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