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今月の薬草
トチュウ
Eucommia ulmoides OLIVER ( トチュウ科 )
トチュウ  Eucommia ulmoides OLIVER (トチュウ科)
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中国原産。雌雄異株。日本へは大正7年(1918年)に渡来した高木性の夏緑広葉樹です。花は小さく淡緑色で花びらはなく,4〜5月に咲きます。果実は扁平で翼があり,暗褐色に熟します。樹皮や枝,葉を引き裂くと,銀白色の糸を引きます。植物学的には1科1属1種で,ニレ(エルム)に近い植物といわれ,特異なグループに属しています。また日本や北アメリカ,ヨーロッパから同じ仲間と思われる化石が発見されているところから,生きた化石ともいわれています。
 和名は漢名の杜仲をそのまま用いたものです。その語源は昔,杜仲という人が樹皮の煎じ液を飲んだところ,仙人の悟りを開いたという故事に由来しています。生薬名もトチュウ(杜仲)といい,滋養強壮を目的とした漢方処方に配剤されています。薬用には太い幹の樹皮を用います。また葉の方は健康茶として利用されており,清涼飲料水しての名前の方がなじみ深いと思います。
 トチュウにはゴム質のグッタペルカを含んでいます。このグッタペルカは絶縁材や歯科領域における治療素材として利用されるものです。しかしトチュウは低含有率のため原料植物に適していません。原料植物としては熱帯に生育するアカテツ科のグッタペルカノキを利用しています。
以前,近くの小学生が薬用植物園を見学に来たことがありました。小学生にどのような話をしてよいのか少々とまどったのですが,香りとしてシソ科のハッカ,甘味としてキク科のステビア,苦味ではニガキ科のニガキなどを紹介しました。最後にトチュウを紹介しましたが,糸状に伸びるグッタペルカの性質を利用し,即席のマジシャンになりきって呪文を唱えながら葉を注意深く手で折るように切り,遠くから見ると葉の切れ端が宙に浮いているかのように演技しました。残念ながら本物のマジシャンというわけにはいきませんでしたが,多少なりとも植物の面白さが子供たちに伝わってくれたようです。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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