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今月の薬草
ハマスゲ
Cyperus rotundus Linne ( カヤツリグサ科 )
ハマスゲ Cyperus rotundus Linne (カヤツリグサ科)
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 各地の砂質地や原野に生育する,多年生草本植物です。葉は線形で光沢があり,花は小さく,夏から秋にかけて濃茶褐色で線形の小穂につけます。株の基部および細長い地下茎の先端部分は肥大しますが,この肥大した根茎(塊茎)は特有の芳香があります。
 和名は浜辺などに生育しているところから名づけられましたが,かなり内陸部でも普通に生育しています。薬用には肥大した根茎(塊茎)を用います。生薬名をコウブシ(香附子)といいます.「芳香のある(地下茎に附属した)子根」といった意味合いといえましょう。トリカブトの「附子」を連想する向きもありますが,まったく別の生薬です。婦人薬や健胃消化薬と見なすことが出来る漢方処方に配剤されています。
 このようにハマスゲは薬用として重要な植物の一つです。しかし畑や庭などに蔓延ると農家の人だけではなく,ガーデニングを楽しまれている人たちにとっても,抜いても抜いても絶えることのない憎き雑草の一種です。昭和大学の薬用植物園でも標本植物として植栽していますが,持ち前の旺盛な生育力により周囲に広がってしまい,その除草にはとても悩まされ続けています。最近では,隣接する駐車場のアスファルトの割れ目からも芽を出し始める始末です。
 アスファルトの割れ目から芽生えたと言えば,昨年の秋に話題になった兵庫県相生市の「ど根性ダイコン」を思い出します。植物の持つ生命力の強さには感動すら覚えます。ところで余談ですが,心ない者の悪戯で地際より折られてしまい,バイテクにより再生するとのニュースがありました。その後,順調に育ち里帰りする日も近いということですが,里帰りとは生育していた元の割れ目に移植することなのでしょうか? 少し気になった次第です。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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