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今月の薬草
ホウノキ
Magnolia obovata THUNB. ( モクレン科 )
ホウノキ Magnolia obovata THUNB. (モクレン科)花 ホウノキ Magnolia obovata THUNB. (モクレン科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本特産種.高木の夏緑広葉樹.葉は大形で倒卵形です.花も大形で枝の先端に単生し,甘い芳香があります.花びらは淡黄白色で大きく,雄しべと雌しべが多数あります.果実は長楕円形で秋に熟しますが,紅熟した種子は白い糸状の種柄で下垂します.
 和名は大きな葉に食べ物を盛りつけたり,包んだことから名づけられたものです.またホオノキともいいますが,これはホウが転訛したものです.薬用には樹皮を用います.生薬名をコウボク(厚朴)といい,健胃消化薬や瀉下薬,鎮咳去たん薬とみなされる漢方処方に配剤されています.
 初夏に咲く木本植物の花は,白色系が目立つような気がします.白色系の花は清々しい季節感をさそい,そして初夏の青空によく映えるように思います.淡黄白色の花をさかせるホウノキも,まさにそのような花の一つです.ただし花は高い樹冠に咲いていることもあり,身近に観察できる機会はそう多くはありません.運よく身近に接する機会がありましたら,よく観察して見てください.まるで大きなハスの花のようです.また特有の甘い芳香は,さぞかし多くの蝶や蜂などを誘うものと思われます.しかし蜜の分泌はほとんどないため,訪れる昆虫と言えばコガネムシなど甲虫類が主たるものだそうです.これら甲虫類は豊富な花粉を食べるために飛来してくるそうです.そして甲虫は雄しべの中を這い回っているうちに,花粉が体面に付着し雌しべに運ばれることになります.このように甲虫が授粉に一役かっているのですね.但し雌しべは雄しべよりも早く成熟するため,同じ花では授粉しない仕組みになっています.ついでながら雌しべが先に熟す植物にはホウノキの他にオオバコやミズバショウなどがあります.反対に雄しべが先に熟す植物にはキキョウやアザミなどがあります.(磯田 進・鳥居塚和生)

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