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今月の薬草
アミガサユリ
Fritillaria verticillata WILLDENOW var. thunbergii Baker ( ユリ科 )
アミガサユリ Fritillaria verticillata WILLDENOW var. thunbergii Baker (ユリ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中国原産。日本には享保年間に渡来したといわれています。各地で観賞用に栽培され,茶花にも用いられる多年生草本植物です。上部の葉は軽く渦巻き状に曲がっています。早春,釣り鐘状の花がうつむいて咲きます。表は淡黄緑色ですが,内面に黒紫色をした網状の模様があります。果実は楕円形で,6枚の翼があります。
 和名は,花の形や内側に見られる黒紫色の模様を「編み笠」に見立てたのです。別名の「バイモ」は漢名「貝母」の音読みで,その由来は一片が大きく他片が小さい二枚貝に似た球根 (鱗茎) がまるで母親が子供を抱いているかのように見えたのでしょう。薬用には球根を用います。生薬名をバイモといい,鎮咳,去たん,消炎を目的とした漢方処方に配剤されます。
 お茶を飲む習慣は中国より伝来したものですが,茶道はこれに楽しみ方や作法など日本独自の精神文化が加わって生まれたものです。現代に受け継がれている茶道の原型は,千利休が大成させたといわれています。茶席を演出するものに茶花がありますが,花入れに挿す花は質素で季節感溢れるものを尊ぶようです。そのため,香りの強いジンチョウゲや名称が不吉なコウホネ (川骨),花が派手な園芸植物などはあまり好まれません。春から秋にかけては茶花に用いる素材は豊富にありますが,冬から早春にかけてはその素材が限られ,茶道家の頭を悩ますところです。その中にあって中国原産であるにもかかわらず,花の少ない早春に咲くアミガサユリは独特の風合いから伝統を重んじる茶席にあってもよく馴染み,珍重されています。(磯田 進)

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