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今月の薬草
ハマゴウ
Vitex rotundifolia LINNE fil. ( クマツヅラ科 )
ハマゴウ Vitex rotundifolia LINNE fil. (クマツヅラ科)花 ハマゴウ Vitex rotundifolia LINNE fil. (クマツヅラ科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本から東南アジア,オーストラリアに分布し,砂浜などに生育する低木性の夏緑広葉樹です。茎は砂の中を横走し,分岐して立ち上がるために群落を形成します。葉は楕円形で,裏面は白色の短毛が密生し,花は紫色でシソの花に似た唇形花,夏に枝の先端に円錐状につけます。果実は球形で,特有の芳香があります。
 和名は,海辺の砂浜を這うように生育していることから,ハマハウまたはハマホウと呼ばれていたものが,ハマゴウに転訛したといわれています。また全体に芳香があるところからハマコウ(浜香)の転訛ともいわれています。薬用には果実を用います。生薬名をマンケイシ(蔓荊子)といい,鎮静薬や消炎薬として用います。
 旅行などに行くと枕が変わるため,なかなか寝つかれない,またはよく眠れないという話しを耳にします。枕は人類の誕生と同じくらいの歴史があるといわれており,私たちの生活に無くてはならない寝具の一つです。古事記や万葉集には「麻久良」の字を当てていましたが,その素材は陶器製のものから丸太,竹や籐を編んだもの,穀物のアワやヒエ,アズキ,蕎麦殻や籾殻,また植物繊維などを直接または布製の袋に入れたものなど多くの素材が利用されています。昔からハマゴウの果実で作った枕はよく眠れると言い伝えられ,平安時代の貴族も利用していたようです。果実はコルク質になっているので,海水に漂いながら分布域を広げることができます。一方,コルク質なので吸湿性があり,その上,香りがよいことから,枕の素材として利用されたのでしょう。最近,睡眠導入を目的として,芳香を利用したアロマセラピーが注目されていますが,日本でも平安の昔からアロマセラピーが行われていたことになります。(磯田 進)

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