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今月の薬草
ジギタリス
Digitalis purpurea LINN. ( ゴマノハグサ科 )
ジギタリス Digitalis purpurea LINN. (ゴマノハグサ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 ヨーロッパ原産。花がとてもきれいなことから,観賞用として各地の植物園や公園などに広く栽培されている多年生草本です。江戸時代末期にオランダから渡来しました。初夏から夏に咲く花は,広い釣鐘状で外面が紫紅色を帯び,内面には白く縁取られた色の濃い斑点がみられます。園芸品はキバナジギタリスなどと交配され,花の色は白色から濃紅色まで様々です。
 学名の Digitalis にはラテン語で「指のような」という意味があり,この読みがそのまま和名となっています。イギリスでは花をキツネの手袋に例えて「フォックスグローブ」と呼ばれています。
 ジギタリスは毒草ですが,イギリス西部のシュロップシャー地方では,古くからこれを水腫の治療に用いていました。医師ウイリアム・ウィザリング(1741-99)はこのことに注目して研究を重ね,ジギタリスが当時不治とされていた水腫を改善することを突き止めました。その後,さらに研究が進められ,ジギタリスの毒の本体(ジギトキシンなどの強心配糖体) は極微量で心臓疾患に有効であることが明らかにされたのです。葉やこれから抽出単離された強心配糖体は強心剤として現在でも重要な医薬品です。
 ただし,ジギタリスは毒性が強く,その芽生えをコンフリーと誤食して重篤な中毒を引き起こすなど,素人には極めて危険な薬草です。(磯田 進)

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