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今月の薬草
カカオ
Theobroma cacao LINN. ( アオギリ科 )
カカオ Theobroma cacao LINN. (アオギリ科)花 カカオ Theobroma cacao LINN. (アオギリ科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 中南米原産の常緑中高木。赤道を挟んだ南北緯20度以内のアフリカや中南米,東南アジアなどで栽培されています。幹に直接淡黄白色の花を多数つけますが,実になる花の割合は200から300に1つと,とても効率が悪いのです。果実は,長さ10?20
cmのラグビーボールのような形をし,その中に卵形をした種子が多数入っています。
 カカオは,マヤ語「カカウアトル」より転訛したといわれています。薬用には種子の脂肪 (カカオ脂) を用いますが,薬用に用いられはじめたのは意外に新しく,18世紀に入ってからのことです。カカオ脂は25度
(摂氏) 以上で柔らかくなり,30〜34度で融解する性質があるところから,座薬の基剤に利用されます。
カカオの種子には多量のポリフェノールが含まれています。最近,これから作られるココアやチョコレートは抗酸化作用をもつ食品として改めて注目されました。
 ココアやチョコレートの歴史は非常に古く,紀元前2000年の古代メキシコにまでさかのぼります。当時は,煎った種子をドロドロにすりつぶし,これを水に溶かして飲んでいました。とても苦い飲みもののはずですが,何故か「神さまの食べ物」と呼ばれていました。砂糖を入れて飲むようになったのはヨーロッパに伝えられてからのことです。当時は,まだ極めて貴重で,裕福な王侯貴族だけの嗜好品でした。やがて,脂肪分をほどよく取り除くなどの改良がほどこされてできた飲み物がココアのはじまりです。また,脱脂前のペースト状のものに脂肪や砂糖,香料を加えて固めたものが,今日のチョコレートの原形です。ちなみに,日本でチョコレートが最初に製造されたのは1877年
(明治10年) でした。そのほろ苦さは文明開化の味でもあったのではないでしょうか。(磯田 進)

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