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今月の薬草
オケラ
Atractylodes japonica KOIDZ. ( キク科 )
オケラ Atractylodes japonica KOIDZ. (キク科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 本州から九州,朝鮮半島,中国東北部に分布し,やや乾燥した日当たりのよい草原に生育する多年生草本植物です。秋に白から淡紅色の花をつけ,総苞は魚の骨のような形をしています。和名は古名のウケラが転訛したもの。薬用には根茎を用い,生薬名をビャクジュツ(白朮)といいます。民間では芳香性健胃薬として用いられ,漢方薬では止瀉整腸薬や利尿薬を目標に配剤されます。
 柔らかい綿毛に被われるオケラの新芽は,アクがなく,特有の香りをもつ美味しい山菜の一つです。信州では昔から「山で美味いはおけらにととき(ツリガネニンジンの新芽),里で美味いはうり,なすび,・・・」と謡われ,春を告げる食材として親しまれています。
 オケラは古くから邪気を払うと信じられているようです。京都祇園の八坂神社では,大晦日の祭事でオケラの根茎が焚かれます。参拝者は,この火を藁縄に移し,火が消えないようにくるくる回しながら家路を急ぎます。そして,これを種火として新年を祝うお雑煮を作り,厄除けと無病息災を願って食べるのです。京都では,この風習が市民の間で現在も受け継がれ,新年の風物詩になっていまいす。また,オケラの根茎である白朮は,元旦に一家の無病息災を願って飲まれるお屠蘇にも配合されています。オケラは新年の祝いごとの黒子といえるようです。(磯田 進)

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