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今月の薬草
クズ
Pueraria lobata OHWI ( マメ科 )
クズ Pueraria lobata OHWI (マメ科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 日本から中国,東南アジアに分布し,日当たりのよい山野に生育している半低木性のつる性植物です。花は紅紫色で夏から秋にかけて咲き,「秋の七草」の一つに数えられています。
 和名は吉野の国(奈良県)のクズ(国栖)地方で産出した葛粉が,良質であったことから名づけられました。薬用には根を用います。生薬名をカッコン(葛根)といい,風邪薬として知られる葛根湯などの漢方薬に配剤されています。
 黄門様の異名をもつ水戸光圀は,テレビドラマの中では国内各地を漫遊し,悪を懲らしめ,庶民の味方として人気者です。その一方では,無類の美食家でもあったと伝えられています。美食家には,やはりお酒はつきもので,しばしば二日酔いに悩まされたようです。その苦しみを癒してくれたのは,葛の花「カッカ(葛花)」でした。その効用は,光圀が水戸藩の藩医であった穂積甫庵に命じて編集した「救民妙薬」(1693)にも紹介されています。そのせいか,光圀への献上品には,クズから作られた品々が多かったとか。
 帰化植物は外国から我が国に渡来した植物をいい,これらの中には異常にはびこって迷惑がられているものも少なくありません。反対に,日本の植物が海外に飛び出し,その国に帰化してしまった例もあります。クズもその一つです。地上部が栄養面で優れているクズは飼料植物として北アメリカに渡りました。また,ルーズベルト大統領のニューディール政策では,乾燥地の緑化と水資源の確保に大いに貢献しました。ところが,クズの旺盛な繁殖力は北アメリカの植生を乱したために,大きな社会問題となったようです。(磯田 進)

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