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今月の薬草
ハトムギ
Coix lacryma-jobi L.var. lma-yuen STAPF ( イネ科 )
ハトムギ Coix lacryma-jobi L.var. lma-yuen STAPF (イネ科)
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 熱帯アジア原産の1年生草本植物で,日本や中国をはじめアジア各地で栽培されています。日本へは享保年間 (1716-36) に中国より渡来したといわれています。花は夏から秋にかけて咲き,成熟した果実は楕円状球形で,殻は爪で割れるくらいの硬さです。川辺など湿地に生育しているジュズダマもこの仲間で,形状はとてもよく似ています。ジュズダマの方は殻がとても硬く,爪で割ることはできないので,これらは容易に区別できます。
 薬用には殻を取り除いた種子を用い,生薬名をヨクイニンといいます。漢方では解熱鎮痛消炎薬を目的として用いられますが,民間では「いぼ取り」として有名です。和名は諸説ありますが,牧野富太郎先生は鳩が好んで食べることからハトムギと名づけられたと紹介しています。実際の栽培現場では,果実が熟す頃には鳩以外にも多くの野鳥が飛来してついばむので,バードウオッチングを楽しんでいる場合ではありません。和名のハトムギが一般化したのは意外に新しく,明治以降といわれています。江戸時代まではシコクムギやチョウセンムギ,トウムギなどと呼ばれていました。
 中国の古い時代に編集された医学書「神農本草経」では,不老長寿に効果があるとされる120種の生薬「上薬」の一つとしてハトムギ(ヨクイニン)が記載されています。最近,ハトムギは薬用だけではなく,健康食品などに利用されることが多くなってきました。やはり日々の健康は,時代を越えて私たちの最大の関心事であるようです。(磯田 進)

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