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今月の薬草
ベニバナ
Carthamus tinctorius L. ( キク科 )
ベニバナ Carthamus tinctorius L. (キク科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 エジブト原産の1〜2年生草本植物で,昔から世界中で栽培されています。花は夏に咲き,鮮黄色から紅黄色をしています。日本へは,中国から朝鮮半島を経て,6世紀末〜7世紀初めの推古天皇の時代に渡来したといわれています。
 和名は漢名の紅花の音読みで,花から紅を採ったことから名づけられました。薬用部位は管状花で,生薬名をコウカ(紅花)といい,主に婦人薬とみなされる漢方処方に配剤されます。
 種子から得られる油はリノール酸含量が高く,古くから高級食用油(サフラワーオイル)として利用されてきました。
 紅色の色素は退色しにくいので,昔から染料や口紅や頬紅として利用されてきました。エジプトの遺跡から発掘されたミイラを包んでいた布帯も紅花で染め上げられていたそうです。このように紅色の鮮やかさは昔から尊ばれてきましたが,化学技術の進歩とともに合成染料に押され,近年は色素としての需要はほとんどありません。
 現在では,山形県の県花として,また最上地方の特産品として知られるだけの感がありますが,乾燥しても花の色や葉の形状がそのまま保たれますので,ドライフラワーとして人気があります。総苞片や葉の縁は鋭い刺状をしているので,家庭内で飾る花としては嫌われることもありましたが,最近は刺のない品種も出回るようになり,小さいお子さんがいる家庭でも気軽に楽しめるようになりました。


[註] 成人病予防の脂質(脂肪)栄養指針として,日本ではベニバナ油などに多く含まれる「リノール酸系植物油」の摂取が長年勧められてきたが,日本脂質栄養学会(会長:奥山治美・名古屋市立大学薬学部教授)は「リノール酸のとり過ぎは,がんや高コレステロール血症・動脈硬化,アレルギー発症などにむしろ良くない」とリノール酸信仰に讐鐘を鳴らしている。
[http://www.inetmie.or.jp/~kasamie/rinorusanMATIGAI.html]
[http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsln/index.html]

(磯田 進)


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