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今月の薬草
ヤマモモ
Myrica rubra SIEB. et ZUCC. ( ヤマモモ科 )
ヤマモモ Myrica rubra SIEB. et ZUCC. (ヤマモモ科)雌花 ヤマモモ Myrica rubra SIEB. et ZUCC. (ヤマモモ科)雄花
雌花 雄花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 本州中部から台湾,中国,フィリピンにかけて分布し,海岸部の近い温暖な山地に生育している常緑の高木です。雌雄異株。花は3〜4月にかけて咲き,果実は球形で暗赤色に熟します。果実の表面は小突起が密生して特有の香りと風味があり,自生地では初夏の果物の一つとして親しまれています。しかしながら,この果実はとても腐りやすく,ヤマモモ酒としたり,塩漬けにして利用することの方が多いようです。最近は流通過程での保冷が整備されたこともあって,まれですが,産地以外の店先にも見かけるようになりました。
 和名は果実を桃に例え,山地に生育していることから名付けられました。万葉の時代に単に「モモ」と呼んでいた植物は,現在の桃ではなく,ヤマモモとの説が有力です。薬用には樹皮を用います。生薬名はヨウバイヒ(楊梅皮)といい,収れん薬とします。また昔は,漁網の染料として用いたこともあったそうです。
 火事は一瞬にして,貴重な人命や財産を灰にしてしまいます。特に春先は,空気が乾燥しています。その上,緑の少ないこともあり,小さな火種であっても,取り返しのつかない大きな火災になることもしばしばです。その対策として屋敷の周囲には防風林を兼ね,耐火性の高いヤマモモを防火林として植えている地方もあります。また最近は乾燥や大気汚染に強いこともあり,街路樹として索漠とした都市の景観に潤いと安らぎを提供しています。(磯田 進)

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