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今月の薬草
ハシリドコロ
Scopolia japonica MAXIM. ( ナス科 )
ハシリドコロ Scopolia japonica MAXIM. (ナス科)花
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 本州から九州北部に自生する多年生草本植物で,やや湿り気のある林床にしばしば群生します。周囲の草木がまだ深い眠りから覚めない早春に芽生え,4〜5月に帯紫黄色で広鐘形状の花をつけます。
 代表的な有毒植物の一つで,食べると幻覚と苦しさから狂乱状態となって走り回るそうで,これが名前の由来です。江戸時代の発明家であり本草学者でもある平賀源内の「物類品騭」では「和名ホメキグサ,東都方言ナナツキキョウ,肥後方言ハシリドコロという」と紹介されています。ちなみに,「トコロ」はオニドコロ(ヤマノイモ科)のような太い根茎を意味します。
 根茎および根は生薬名をロートコンといい,鎮痛・鎮痙薬とされるほか,ロートエキスの原料,アトロピンやスコポラミンの製造原料などに用いられますが,作用が激しいので一般には用いられないようです。
 新芽はみずみずしく柔らかく,美味しそうなので,しばしば山菜と間違えられ,誤食による中毒事故,さらには死亡事故が絶えません。例年,数件が新聞記事として登場していますが,これらは氷山の一角だろうと思われます。
 早春に咲く花は春の到来を告げる自然界の広報担当でもあるのでしょうが,人は山菜として楽しむことに気を取られ,毒草としての危険性まで配慮できないようです。皆さんも春の山菜採りには十分に注意して下さい。
(磯田 進)

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