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今月の薬草
ノイバラ
Rosa multiflora THUNB. ( バラ科 )
ノイバラ Rosa multiflora THUNB. (バラ科)花 ノイバラ Rosa multiflora THUNB. (バラ科)果実
果実
−写真は昭和大学薬学部薬用植物園ホームページより転載−
 全国各地に見られる落葉低木で,日当たりのよい山野に生育しています。花は初夏に咲き,花びらは白色,まれに淡紅色の花も見られ,芳香があります。果実は秋に紅熟し,形は卵状楕円形から球形です。
 和名は,読んで字のごとく「野に咲くバラ」に由来します。なお,「イバラ(茨)」は刺のある小低木の総称で,ノイバラだけを指すものではありません。薬用には果実を寫下薬とし,その生薬名はエイジツ(営実)です。
 日本の文化は中国の影響を受けて発展しましたが,薬草についても例外ではありません。しかし,ノイバラの果実を寫下剤として用いるのは我が国独特のもので,中国ではこのような用い方はありません。
 文豪ゲーテの作品「Heidenroeslein(野薔薇)」は,彼が22才の頃,恋人を荒野に咲く野バラに例え,フランスのゼーゼンハイム村で詩に詠んだものといわれています。この芸術性豊かな詩はシューベルトやウェルナーなどの名だたる巨匠たちを虜にしてしまい,彼らによって素晴らしい曲がつけられました。その数は世界で70曲を越すといわれています。我が国でも翻訳され,唱歌として親しまれていますので,口ずさんだ方も多いと思います。ゲーテが想像した野バラは,紅(くれない)色の花でした。ゲーテはその後も多くの恋をしましたが,その恋はいつも紅色の野薔薇の花のように情熱的であったといわれています。 (磯田 進)

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