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認知症

 

dementia、痴呆

脳や身体の疾患を原因として記憶・判断力などの障害がおこり、日常生活がおくれなくなった状態。従来使われていた「痴呆」という言葉が差別的という意見を踏まえて、2004年以降「認知症」という言葉が使われるようになった。85歳以上では4人に1人が認知症といわれており、2005年には患者数が約189万人に達している。「アルツハイマー病」と「脳血管障害による認知症」が多い。認知症の症状には記憶障害、見当識障害、判断力の低下などの中心症状と、幻覚・妄想・いらだち・不安・うつ状態・攻撃性(暴力)・興奮などの周辺症状がある。

アルツハイマー病は、脳の神経細胞が急激に減ってしまい、脳が病的に萎縮して高度の知能低下や人格の崩壊がおこる認知症であり、緩やかに発症し、徐々に進行していく。記憶の低下にともなって、日常生活にも支障をきたすようになる。初期の段階では運動麻痺や感覚障害などの神経症状はおきず、また、本人は病気だという自覚がない。アルツハイマー病では大脳皮質の萎縮、老人斑・神経原線維変化の出現、神経細胞の脱落、神経伝達物質の異常がおこっている。 特に、記憶の働きに関わる神経伝達物質であるアセチルコリンの減少が著しい。

脳血管障害による認知症の原因としては、脳梗塞の多発によるものが大部分(70~80%)を占める。脳血管障害により脳の血流量や代謝量が減少し、発作によって認知症の症状が悪くなることがある。脳血管障害による認知症では、障害された部位によって症状は異なり、めまい、しびれ、言語障害、知的能力の低下等にはむらがある。また、記憶力の低下が強いわりには判断力や理解力などが相対的によく保たれている場合(まだら認知症)がある。

認知症の中心症状である記憶障害を根本的に治療することは出来ないが、症状改善薬として、塩酸ドネペシル(アリセプト;アセチルコリンエステラーゼ阻害薬)がある。一方、周辺症状のコントロールを主な目的として、抗不安薬、精神安定薬、抗うつ薬、脳循環代謝改善薬、睡眠(導入)薬等が使用されている。 (2007.8.31 掲載)


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