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腸管出血性大腸菌感染症

 

enterohemorrhagic Escherichia coli infection

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)では三類感染症に指定されている。グラム陰性無芽胞桿菌である大腸菌はヒトの腸管内では共生状態にあり、病原性を示さないが、一部の菌株は腸管付着能、粘膜細胞侵入能、腸管毒素産生能などの病原因子をもち、下痢を主症状とする腸管感染症を引き起す。これらの下痢原性大腸菌は腸管病原性大腸菌、腸管組織侵入性大腸菌、毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌に分類される。腸管出血性大腸菌は、1982年米国でのハンバーガーを原因食とする出血性大腸炎の集団発生の原因菌として最初に分離された。日本でも1996年夏に学童の集団食中毒として6000人以上が罹患し、全国では1万人を超える患者が発生した。腸管出血性大腸菌の産生するベロ毒素には、その抗原性の違いから赤痢菌の産生する志賀毒素と同一の1型と類似の2型がある。いずれも細胞内に取り込まれてRNAグリコシダーゼ活性を示す。腸管出血性大腸菌はウシ、ヒツジなどの腸管内に存在し、汚染された肉、ウシの糞便で二次的に汚染された食材、水などが感染源となる。70℃の加熱により死滅するが低温では長期間生存可能であり、酸に抵抗性をもつため胃酸の中でも生存する。発症に必要な菌数は極めて少数で、50~100個程度の菌の感染でも発症する。ほとんどの患者で下痢症状がみられ、一部の患者に溶血性尿毒症症候群(HUS)が併発する。腹痛を伴う下痢で発症し、半数に血便がみられる(出血性大腸炎)。下痢症患者の2~8%に溶血性尿毒症症候群あるいは脳症などの重篤な合併症が発症することがある。(2005.10.25 掲載)(2009.1.16 改訂)(2014.7.更新)


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