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後天性免疫不全症候群

 

acquired immunodeficiency syndrome

レトロウイルスであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によって起る、全身性の免疫不全症候群。HIVにはHIV-1とHIV-2の二つの型があり、全世界的にはHIV-1ウイルスが多くHIV-2は西アフリカを中心とする地域に限定されている。2012年のUNAIDSの発表では、世界のHIV感染者数は3400万人、毎年250万人が新たに感染し、年間170万人がエイズ関連で死亡していると推定されている。また国立感染症研究所の「病原微生物検出情報」によれば、わが国では、2012年に新たに1002件のHIV感染が報告され、年間1000件程度で推移している。1985~2012年の累積報告数はHIV感染者14,706件(男性12,518件、女性2,188件)、エイズ患者6,719件(男性6,022件、女性697件)となっている。わが国においては、血液凝固因子の非加熱製剤に混入したウイルスの血友病患者への感染がかつては多かったが、加熱製剤への切り替えで激減した。現在は、異性間(44%)および同性間(32%)の性的接触による患者が増加し、母子感染による新生児エイズの報告もある。感染細胞またはHIVウイルスが混入した血液、精液や膣分泌液などの体液、母乳および血液製剤などから輸血もしくは性交での感染、あるいは感染した母親から胎児への子宮内感染、産道感染および新生児への授乳感染もある。

HIVはCD4陽性のT細胞やマクロファージに感染する。感染6~8週目に抗HIV抗体陽性となる。この時期の感染者を無症状病原体保有者(キャリア)と呼ぶが、この時期に血液はHIV汚染しているので、わが国では献血された輸血用血液は抗HIV-1、HIV-2抗体検査およびPCR法によるウイルス遺伝子の検査を行っている。やがて宿主の免疫が低下し、CD4陽性T細胞数が減少すると、持続性全身性リンパ節腫脹症となり、続いて発熱、体重減少、倦怠感、下痢を発症する。この時期をエイズ関連症候群(ARC)と呼ぶ。さらに免疫低下すると、ニューモシスチスカリニ肺炎、結核、性器ヘルペスなどの日和見感染症やカポジ肉腫などを発症してエイズと診断される。感染から発症までの期間は、一般に数年から10年以上までと長い。この間に、ウイルスT細胞やマクロファージに感染して徐々に免疫不全に至る。この宿主の免疫低下の進行は、CD4陽性T細胞の数や、T細胞のCD4/CD8の比によってモニターすることができる。HIVの感染の診断は、抗HIV抗体によるELISA法による予備試験と、ウエスタンブロット法や蛍光抗体法による確認試験による。

ウイルスの確認は、ウイルス分離、ELISA法によるウイルス抗原の検出、PCR法によるHIV遺伝子の検出などによる。治療には、逆転写酵素阻害剤のアジドチミジン(AZT)や、プロテアーゼ阻害薬のインジナビル、リトナビルなどを3剤併用して使用することが多い。これらの薬はいずれもHIVの複製を抑え、CD4細胞の破壊を防ぐ。しかし副作用や潜伏感染ウイルスには無効という問題があり、特効薬はない。予防にはワクチン開発が進行中であるが、ウイルス外膜のenv遺伝子の変異が高頻度で起るため、困難を伴う。「同義語=エイズ」(2005.10.25 掲載) (2009.1.16 改訂)(2014.7.更新)


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