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実薬対照試験

 

陽性対照試験

薬の臨床試験において、治験薬を治療効果の明らかな薬(実薬)と比較する試験であり、通常ランダム化二重盲検で行われる。試験の目的としては、治験薬の既存薬に対する優越性を示す場合と、非劣性又は同等性を示す場合がある。この試験では、既存薬である対照薬が適切な用法・用量で用いられ、十分な分析感度を持っていなくてはならない。有効性が既に認められている実薬に対して非劣性であれば、治験薬の有効性を示すことができ、また治験薬の方が優れているという結果であれば優越性を示すものとして解釈できる。一方、対照薬が適切に用いられていない試験計画では、治験薬の優越性が示されない限り、非劣性試験としても使用できない。

実薬対照試験は、全ての被験者が実薬あるいは治験薬を投与されるため、一般にプラセボ対照試験よりも倫理上及び実施上の問題は少ない。しかし、治験薬を投与される被験者は標準治療を受けていないことになる。対照薬による治療が生存率を改善したり、回復不能な障害の発生を減少させることが明らかな場合は、治験薬の使用については適切な根拠が必要である。治験薬が対照薬である実薬と同程度に良い結果を示すことを予想しうる強い証拠がない場合には、アドオン試験上乗せ試験)のデザインがより適切であるとされている。また、ランダム化二重盲検試験であるので、被験者と治験実施医師のバイアスは小さいものの、両者ともにプラセボを使用していないことは分かっている。抗うつ薬の試験のように主観的な評価が行われる場合には、ボーダーライン上の症例を成功側としてしまい、非劣性の結果を導きやすいという欠点があるとされている。(2007.8.31 掲載)


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