日本薬学会 薬学用語解説 日本薬学会
 参考文献  使い方
当サイトの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、本会は利用者 が当サイトの情報を用いて行う一切の行為について何ら責任を負うものではありません。

ノロウイルス

 

Norovirus

カリシウイルス科(Caliciviridae)のウイルスで,1本鎖RNAウイルスゲノムとする直径約30nmの正20面体構造をもつが,エンペロープはもたない.かつて急性胃腸炎を起すウイルスとして,ノーウォーク様ウイルス(Norwalk-like virus),あるいは小型球形ウイルス(SRSV; small round spherical virus)と呼んでいたが,2002年に国際ウイルス学会で,SRSVの大部分をノロウイルスとして正式名称に統一された.ウイルス性食中毒の原因の大部分を占め,わが国の食中毒発生件数全体でも大きな割合を占める病因物質である.食中毒の発生は冬期が多い。汚染食品の摂取のほかに,食品を調理した器具や水,調理人の手指などの汚染を介したほかの食材の二次汚染などにより,集団食中毒の発生原因になることが多い.ノロウイルスを摂取するとヒトの空腸の腸管上皮細胞に感染して増殖し,上皮細胞の変性や剥離を引き起して,24~48時間の潜伏期の後に下痢を発症する.主な症状は嘔吐嘔気下痢であるが,腹痛のほかに頭痛発熱(38℃以上)を伴うこともある.通常は軽症で,治療をしなくても3日以内に回復するが,老人,乳幼児あるいは免疫低下した患者ではまれに重症化して死亡する例がある.典型的な糞口感染の形態をとり,患者の便から排出されたウイルスが下水処理を免れて河川から沿岸部を汚染すると,汽水域でカキなどの貝類に取り込まれて濃縮される.これが再びヒトに摂取されて食中毒を起すほか,中毒症状が消えた後も3~7日間はウイルスが患者の便中に排出されるため,患者の便あるいは吐瀉物に接触することにより,ヒトからヒトへの二次感染を起すことがある.したがって,予防法としては生カキの汚染検査のほか,食品の取扱者に手洗いなどの衛生管理を徹底し,まな板などを介した調理場の二次汚染の防止を図ること,患者の糞便や吐瀉物の扱いに気をつけること,などが重要である.なお,ウイルス粒子はpH3程度の酸性や水道水中の塩素,および60℃,10分の加熱には抵抗性を示すので,次亜塩素酸ナトリウムによる消毒・殺菌や85℃,1分以上の加熱が必要である.(2005.10.25 掲載)(2009.1.16 改訂)


IndexPageへ戻る





Copyright© 2005-2008, The Pharmaceutical Society of Japan