日本薬学会 薬学用語解説 日本薬学会
 参考文献  使い方
当サイトの掲載情報の正確性については万全を期しておりますが、本会は利用者 が当サイトの情報を用いて行う一切の行為について何ら責任を負うものではありません。

ウシ海綿状脳症

 

bovine spongiform encephalopathy BSE

従来の細菌やウイルスなどの病原体とは異なり、遺伝情報をもたない病原物質であるプリオンによって感染する。哺乳動物には、正常型のプリオンタンパク質が存在するが、病原性をもつのは異常型のプリオンタンパク質で、後者はタンパク質の立体構造が変化してβ-シート構造を多くもつようになり、またタンパク質分解酵素に抵抗性を示して細胞内に蓄積する。この異常型プリオンタンパク質がなんらかの機構で脳内に蓄積すると、正常型のプリオンタンパク質を異常型に変換して(これを“感染”と呼ぶ)異常型プリオンタンパク質を増やし、長い期間ののちに発症する。、ウシのウシ海綿状脳症(BSE)のほかに、ヒトの孤発性プリオン病として、医原性クロイツフェルト・ヤコブ病、クールーが、遺伝プリオン病として、家族性クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストライヤー・シャインカー病、家族性致死性不眠症がある。このほか、ヒツジ、ヤギのスクレイピー、オオシカの慢性るいそう病、ミンクの伝達性ミンク脳症、ネコ、トラなどのネコ海綿状脳症などがある。これをプリオン病として総括する。

ヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病においては、患者の死体の硬膜を乾燥した製剤を脳外科などの手術後の移植に用いた場合には、高率で感染して発症することが示され、医原病として警告されている。また、孤発性の中には、BSEを発症したウシの脳脊髄などを含む部分を食べたり高密度に接触した場合に、同様のクロイツフェルト・ヤコブ病が発症することもあるが,これは異型クロイツフェルト・ヤコブ病として区別されている。また、BSEの発症が、もともとはスクレイピーを発症したヒツジの肉骨粉をウシの飼料として与えたことが原因であるとされ、同様にBSEのウシの肉骨粉からウシへの感染の可能性が議論されている。食肉の安全性との関係から、このような同種間、または種を超えた、しかも経口的なプリオンの感染が起るか否かについてはさまざまな議論がなされている。

行政的には、BSEを検査することで異型クロイツフェルト・ヤコブ病の発症を防止する対策がとられている。このように、プリオン病は、感染の様式も機構もこれまでの病原体とは大きく異なっているため、診断は、ヒトでは臨床的な診断に加えて、死者の脳組織の染色や異常型プリオンタンパク質の検出を、抗体を用いた検査や、プロテアーゼ耐性によって行っている。予防は、行政的な対策が主で、感染牛の焼却処分、感染源とされる肉骨粉の飼料としての使用禁止、あるいはBSE検査の徹底、などのほか、医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の予防のため、患者からの乾燥硬膜の使用禁止、などを行っている。なお、治療は対症療法以外にない。(2005.10.25 掲載)(2009.1.16 改訂)(2014.7.更新)


IndexPageへ戻る





Copyright© 2005-2008, The Pharmaceutical Society of Japan