創薬化学のすゝめ
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■■■12+34*5+.6(12+34*5+.6(.//.0■■■■■■■■■■■■■■ ■抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)とは、抗体とペイロード(低分子化合物)を、適切なリンカーを介して結合させた薬剤です。がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介してペイロードをがん細胞へ直接届けることで、ペイロードの全身曝露を抑えながら、がん細胞を効率的に攻撃します。2020年に発売された抗悪性腫瘍剤「トラスツズマブ デルクステカン」は、細胞膜表面に存在するヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)を標的因子とする抗体トラスツズマブを含むADCです。本剤の創製過程で開発されたADC技術を活用し、別の抗体を用いた新たな薬剤候補を生み出すこともできています。ペランパネルは、シナプス後膜のAMPA受容体を選択的かつ非競合的に阻害し、神経の過興奮を抑制するファースト・イン・クラスの抗てんかん剤です。てんかんの部分発作や強直間代発作の併用療法に対して日本、米国、欧州、中国、アジアなど70か国以上で承認を取得しています。日本、米国および中国では部分発作についての単剤療法も認められています。この技術開発の■は、ADCとして最適なペイロードのデザインと、ペイロードを遊離させる新規リンカーの設計の2点です。これらの■に創薬化学者の持つ3つの力、すなわち、①データを詳細に分析して良い点と悪い点を正確に把握する力、②分析した結果を基に薬剤になる構造を想像する力、③実際の物として創り上げる力が合わさり、イノベーションを起こしました。「トラスツズマブ デルクステカン」は、創薬化学者の力が十二分に発揮されたことで創製できた薬剤だといえます。脳血管障害をターゲットに神経細胞死抑制を指標としたHTSを実施し、得られたヒット化合物群の中で、非競合的にAMPA受容体を阻害するユニークな化合物に着目しました。点滴静注可能な水溶性確保を目指した構造展開を行い、リード化合物に至りましたが、戦略的に別の神経変性疾患治療薬創出プロジェクトに方向転換を行いました。経口有効性の飛躍的向上が求められたため、中心母核(A)を先入見にとらわれず粘り強く検討し試行錯誤の末、3方向に芳香族環が伸びたユニークな一連の化合物で強いAMPA阻害作用と代謝的安定性が両立することを見出しました。最適化研究により、ピリドンを中心母核に持ち高い経口有効性を有するペランパネルの創出に至り、唯一の高選択的AMPA受容体拮抗薬として患者さんにお届けできることとなりました。出所:Copyright© 2023 IQVIA. IQVIA World Review Analyst, Data Period 2021, IQVIA Pipeline & New Product Intelligence, EvaluatePharma, Clarivate CortellisCompetitive Intelligence をもとに医薬産業政策研究所にて作成(無断転載禁止)出典:医薬産業政策研究所 政策研ニュース No.67(2022年11月)フランス 2品目ベルギー 1品目ハンガリー 1品目イタリア 1品目スウェーデン 1品目■■■■■■■■■■■■■ff■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ff■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■医療用医薬品世界売上上位100品目の国別起源比較 アメリカ47品目最適なペイロードと新規リンカーを有するHER2を標的とした抗体薬物複合体ユニークな構造を持つ唯一の高選択的AMPA受容体非競合拮抗薬■■

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