創薬化学のすゝめ
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#"!!!!!""""!!"!"#"日本発の薬■■■2007年、自治医科大の研究グループは非小細胞肺がんの4‒9%におけるがん化のメカニズムがEML4-ALK融合遺伝子であることを報告しました。これは受容体型チロシンキナーゼであるALKと細胞内骨格タンパク質EML4の2つの異なる遺伝子が染色体逆位により融合したものであり、その転写産物のEML4-ALKはキナーゼ活性を恒常的に示すために強力な発がん遺伝子として働くことが明らかになりました。アレクチニブはALKのキナーゼ活性の阻害によりALK融合遺伝子を持つがんに対し薬効を示す中外製薬の創製した薬剤であり、非小細胞肺癌(2014年)、未分化大細胞リンパ腫(2020年)に対する承認を受け、更に海外においても欧米を含む70か国以上で使用されています。エイズ(AIDS/後天性免疫不全症候群)はHIV-1というウイルスによって引き起こされます。昔は不治の病として恐れられていましたが、現在では複数の薬を組み合わせて治療する多剤併用療法が確立され、血液中のウイルス量を検出限界以下にコントロールして普通の生活が送れるようになりました。HIV-1の増殖に必須の酵素であるインテグラーゼを阻害するドルテグラビルは、多剤併用療法におけるキードラッグとして世界保健機関(WHO)からその使用が推奨されており、世界中で約1,700万人の患者さんが服用しています。成人正常組織でのALKの発現が限定的であることから、標的選択性に優れたALK阻害剤は正常組織へ悪影響を及ぼすことなくALK融合遺伝子をもつがんに対する高い治療効果を示すことが期待できると考えられました。そこで社内ライブラリから取得した構造的独自性の高い四環性のヒット化合物を出発点として強い阻害活性、高い選択性、優れた体内動態といった要求性を同時に満たす誘導体化が行われました。主要な課題の一つである高い選択性の達成のためには標的の三次元情報を用いたデザイン(SBDD)が駆使されアレクチニブの創製に至りました。ドルテグラビルはHIV-1感染細胞において、インテグラーゼの触媒活性中心に存在する2つのマグネシウムイオンにキレートし、ウイルスDNAをヒトゲノムDNAに組み込む機能を阻害することでウイルス増殖を抑制します。その創製に至るまでには、化合物ライブラリーのスクリーニングでヒットしたジケトカルボン酸を起点として、阻害メカニズムの仮説検証、マグネシウムイオンへのキレート力を高める骨格デザイン、スケールアップのための合成ルート確立など、多くの課題がありました。これに対し研究チームは、有機化学、無機化学、生化学など様々な「化学」の力を駆使することにより、ゴールへ到達することができました。ドイツ8品目デンマーク8品目イギリス11品目スイス11品目■■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■!■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ff!■■■■■■■■■■■■!■■■■ff■■■!■■■■■■!■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ff■■■■■■■■■■■■■■■■ff■■■■■■■■■■■■■■  ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ff■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ff■■■■■■■■■■■■■ ■■■標的構造に基づきデザインされた選択的ALK阻害剤HIV治療の第一選択薬となったキレーター日本9品目

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