創薬化学のすゝめ
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「くすりの候補化合物」が「くすり」となるためには、ヒトにおいて有効性や安全性を調べることが必須です。人での有効性や安全性について試験することを「臨床試験」と言い、その中でも、国(厚生労働省)から「くすり」として認可を受けるために行う臨床試験のことを、「治験」といいます。治験には厳格なルールが定められており、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)に基づいて厚生労働省が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)」のルールに従い行われます。製薬会社には高品質な医薬品を安定供給する責任があります。新薬を大量かつ高い品質で製造し、世界中の患者さんに安定して届けられるようにするためにはプロセス研究が必須です。プロセス研究では、コスト削減、スピーディな製法開発、品質安定化のための堅牢な製法、安全で環境に配慮した製法等が求められます。短期間で「医薬品の製造管理及び品質管理の基準(GMP: Good Manufacturing Practice)」に則ったプロセスを構築することがProcess Chemistの腕の見せ所です。Medicinal Chemistがベストな化合物を創製するのに対し、Process Chemistはベストな合成法を開発します。すりを提供し、治療の可能性を広げていくのです。病院などでは、同じくすりであっても、年齢や性別、症状、体質などが異なる数多くの患者さんに処方されます。その結果、創薬開発の段階ではわからなかったくすりの作用や、使い方などの改良すべき点がわかってきます。これらの得られた情報をもとに、より適正な使用につなげたり、くすりの改良や新薬の開発へと活かされることを育薬といいます。このようにして、患者さんにより安全で、より効果のあるく治験の3つのステップ・ 第Ⅰ相試験(フェーズⅠ)  少数の健康人志願者を対象に安全性、体内動態を確認・ 第Ⅱ相試験(フェーズⅡ)  同意を得た少数の患者を対象に、有効且つ安全な投与量・投薬法を確認・ 第Ⅲ相試験(フェーズⅢ)  同意を得た多数の患者で既存薬と比較、有効性と安全性をチェック✓ 承認申請に必要なデータを得るために、ヒトを対象に行う✓ 目的・内容を十分に説明し、文書で同意を得る ⇒ Informed Consent✓ 全てGCP(Good Clinical Practice)に基づいて実施する製剤・DDS製剤・DDSバイオプロセスバイオプロセス分子生物・生化学分子生物・生化学薬効・薬理薬効・薬理有機合成有機合成効果が高い効果が高い副作用が無い副作用が無い飲み易い剤形飲み易い剤形万全な供給万全な供給低コスト低コスト速やかに吸収速やかに吸収確実に排泄確実に排泄有機合成有機合成化学工学化学工学薬物体内動態薬物体内動態安全性評価安全性評価高い品質高い品質分析・医薬品分析・医薬品品質評価品質評価プロセス化学での検討項目薬創りには非常に多くの過程と時間が必要です。低分子医薬品の場合、基礎研究から上市まで通常は9〜17年かかると言われており、有機合成化学は重要な役割を担っています。ここでは、創薬の流れと有機合成化学の役割について紹介します。臨床試験申請審査上市PROCESS CHEMISTRYProcessChemistが患者さんへ

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