創薬化学のすゝめ
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くすりに求められることは多種多様です。これらの条件を満たすバランスの取れた化合物を創出することがMedicinal Chemist の腕の見せ所です。まず、有機化学の知見を活かしてドラッグデザインを行います。次にその化合物の合成ルートを設計し、実際に化合物の合成を行います。合成した化合物の構造解析を行い、目的とした化合物ができていることを確認します。合成された化合物は初期スクリーニング評価に進みます。その評価は、薬効だけではなく、物性(化合物の物理学的性質)、動態(生体内での化合物の動き)、毒性(化合物の安全性)、と多岐に亘ります。基礎評価で良好な結果を示した化合物は、動物において十分な安全域を担保し、ヒトでの安全性の保証することを目的に更なる詳細な評価(高次評価)に進みます。高次評価をクリアした化合物は開発候補化合物(くすりの候補化合物)として選ばれます。アンメットメディカルニーズ(UMN)を基に、創製する薬の疾患や狙うべきメカニズムを決定します。創薬において選択される主な標的はタンパク質ですが、それだけには限りません。最近ではmRNAを標的とした研究も活発に行われています。評価系をつくり、活性を示すタネ(リード化合物)を絞り込む段階です。スクリーニング手法はランダムアプローチとラショナルアプローチの2通りに大別されます。ランダムアプローチでは大量の化合物を網羅的にスクリーニングするHigh-throughput Screening (HTS)という手法がとられます。一方、ラショナルアプローチとはタンパク質の構造を基に、計算化学でリード化合物を選んだり、デノボデザインで創出する(=タネとなるリード化合物を発生させる)手法です。各スクリーニングには特徴があり、少しでもクオリティの高いタネを見つけることが重要です。また、最近ではAI技術を用いた新薬の研究(AI創薬)も行われるようになっています。基礎研究非臨床研究MEDICINAL CHEMISTRYMedicinalChemistの創出した新薬を創薬の流れと化学の役割

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