創薬化学のすゝめ
12/16

2医薬品はヒトの体内に取り込まれることから、その安全性を担3有機化学反応の過程を電子の動きをトレースする矢印を用4医薬品の合成ルートを設計あるいは改良する上で、基本的医薬品の多くは有機化合物であり、それらが作用する酵素や受容体などの生体高分子もまた有機化合物である。有機化合物の多くはsp3、sp2、spの3種の混成軌道をとりうる炭素原子を中心とした骨格に、ヘテロ原子(窒素、酸素、硫黄、リンなど)が加わることにより成り立っている。これらが様々な化学結合や官能基を形成することで、エナンチオマーやジアステレオマーなどの立体異性体を含む、3次元的な広がりを持つ複雑で多様な分子を生み出している。ヘテロ原子や官能基は、化合物に電気的な偏りを生じさせ、生体分子との相互作用に重要な役割を果たす。薬となる有機化合物は、適切に配置されたヘテロ原子や官能基などが3次元的に生体分子と相互保するためにも構造を正しく決定することが欠かせない。そのために、構造解析に必要な各種機器分析の特性を理解し、適切に利用することで合成・取得した化合物の構造を正しく決定・評価することは、医薬品開発において重要な能力である。いた反応機構で説明できることが重要である。反応機構を理解することで、より効率的な反応の選択や開発、副反応や危険な合成の回避が可能となる。期待した反応が進行しなかった場合にも、反応機構を考察することでより良い反応条件の選択に繋がる可能性もある。また、酵素による生体内での分子変換も化学反応であり、その工程と各段階での反応機構をな有機反応の知識と理解は欠かせない。加えて、新規反応の開発や画期的な分子骨格構築法の確立が必要になる場合もある。合成ルートを立案する際には、入手可能な原料の選択、効率性(全収率、工程数、コストなど)や安全性などを考慮する作用し生体応答を引き起こす。このことから、分子の構造を3次元的に捉える能力を身につけることは創薬に携わる上で非常に重要である。■分子を3次元構造として理解できる■低分子化合物の様々な構造異性(立体異性、光学異性、配座異性)を理解し、紙面上で立体構造を描写できる■分子構造に基づいて官能基の特性(分極や反応性)を理解できる■アミノ酸、核酸、脂質、糖などの生体を構成する基本分子の構造と役割を理解している■機器分析で得られたスペクトルに基づき、取得した化合物の構造が正しいか判断できる■各種機器分析 (1H NMR、13C NMR、2D-NMR、IR、MS、UV など) のデータを総合的に組み合わせて、分子の構造を決定できる学習することは、代謝など薬物の生体内での挙動をより一層深く理解することにつながる。■生成物に至るまでの反応の過程(反応機構)を矢印で書くことができる■生体内でおこる酵素反応や代謝反応のメカニズムを理解できる(発展的内容)ことも必要となる。■基本的な有機反応(人名反応を含む)を理解している■目的とする化合物に対して、効率的で確実性の高い合成ルートを立案できる技能について医薬品の多くを占める有機化合物は、化学合成によって供給されている。有機合成を行う際には様々な化学物質(試薬)を用いて反応を行う。これらの化学物質は法規制を受けるものもあり、取り扱う化学物質の性質(爆発性、腐食性、臭気性、毒性など)について使用前に熟知しておくことは安全衛生の面から非常に重要である。特に、一般的に汎用される化学物質の特性については身につけておきたい。加えて、基本的な有機合成の実験についても着実にかつ安全に実行できるスキルを身につけておきたい。モダリティの多様化などにより様々な物質の合成が求められることがあるが、基本実験の技能を修得していれば、それらへの対応はじゅうぶん可能である。知識について創薬に携わるためには、有機化学の基礎的な知識に加え、以下に示すいくつかの項目を修得することが望まれる。大学・大学院での習得が必須または推奨される知識技能と1

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る