創薬化学のすゝめ
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123企業研究者から寄せられた意見です大学と企業での研究の違い大学と企業には、求める成果と研究スタイルで大きな違いがあります。求める成果について、大学では高質な論文を求めるのに対して、企業では製品としての薬(特許)を追求します。研究スタイルについて、大学ではサイエンスにおける真理を追究するのに対して、企業では顧客ニーズに即した製品を求めます。研究チームの規模も企業と大学での違いの一つです。薬理や薬物動態、安全性等専門性の異なる研究者が協働して10人から多い時には30人程度の大きなチームとなる点が企業研究の特徴と言えます。一方大学では、少ないときには一人、多くとも10名以内での研究が多いと思います。またビジネス的視点の有無も両者の大きな違いです。企業では顧客ニーズに応える薬(製品)を世に出すことが最終目標ですから、研究進■以外にも費用対効果や競合他社に勝つためのスピード、戦略等を含むビジネス的視点が求められます。このため企業研究では数か月〜1年程度のスパンでマイルストーンが設定され、進■が管理されています。そのため研究が戦略的理由で中止になるケースもあります。研究期間も両者の違いの一つです。創薬は、研究開始から上市まで10年以上かかります。研究期間も5年以上の及ぶケースもあります。日々の研究では創薬という達成感を得にくい側面もありますが、実際に薬が患者さんに届くことで社会への貢献を実感できる点は企業研究の大きな特徴です。企業では自立して主体的に研究することが求められます。そのためには大学時代から真■にサイエンスに向き合い、目的意識を持って一つ一つの実験に取り組むことが重要です。創薬では多くの困難を伴うことから粘り強くやり抜く姿勢も求められますし、データを正しく解析し、思い込みではなくエビデンスに基づき議論する姿勢がなければ企業研究者として生き残ることはできません。さらに、論理的思考力を磨き、課題解決できる複数の仮説を提案し、それらに優先順位を付けて研究に取り組めるとよいでしょう。創薬では難度の高い問題に取り組むことから独力で解決できることは稀ですので、専門性の異なる周囲を巻き込みながら解決にあたれるコミュニケーション力も求められます。そのことから専門分野以外にも興味を持って理解・挑戦・勉強しようとする姿勢も培っていて欲しいと思います。入社後のキャリアパスには様々なケースがありますが、幾つかの例を以下に示します。一般的な傾向としてメディシナルケミストは留学も含めて10年程度自部署で成果創出に貢献し、そこで得られた創薬経験を生かして、さらに同部署で昇進するケースや他部署に異動してキャリアを積むケースがあります。メディシナルケミストは、創薬プログラム全体で分野横断的リーダーシップを発揮することから、他部署でも重宝されるケースが多いようです。なかには他部署の部長クラスに該当部署での経験なく抜■されるケースもあります。■研究員10〜20年、米国留学1〜2年、グループ長(課長)5年、研究所長(部長)■研究員2年、主任研究員6年、海外駐在3年、主管研究員3年、グループ長5年■研究員5〜10年、海外留学1〜2年、主任研究員1〜3年、グループ長5〜10年、事業開発部長■研究員10年、マネージャー5年、グループ長5年、部長あるいは他部門の要職■創薬化学以外、あるいは研究職以外として、プロセス(CMC)、プログラムマネジメント、アライアンス、 事業開発、開発、薬物動態、品質保証、工場生産、知的財産といった部門へのパスもあります。企業で研究を遂行する上で、大学・大学院で培っておいて欲しい思考法・研究姿勢企業研究者から届いたアドバイスですメディシナルケミストのキャリアパス企業で働くメディシナルケミストへの

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