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くすりの科学



世界を結ぶくすり
日本で開発された「くすり」が外国で役立ち、外国の「くすり」が日本で使われています。今日ほど「くすり」に携わる人々が、国際的視野に立って活躍できる時代はありません。これから、「くすり」の国際化はますます進みますので、薬学を学ぼうとする人は国際感覚を身につけることが重要です。
日本で創られた画期的なくすり
医薬品の研究開発は国際化が非常に進んできています。このような世界的流れの中で、日本発の画期的な「くすり」も見られるようになってきていることは強調しておいてよいことでしょう。
微生物から発見された免疫抑制薬/タクロリムス(FK-506)
コレステロールを下げるくすり/プラバスタチン
キラル医薬品/レボフロキサシン
徐放性製剤/リュープリン


 
微生物から発見された免疫抑制薬/タクロリムス(FK-506)
◆臓器移植と免疫
 臓器移植で困難な問題は、リンパ系細胞が移植された臓器を異物とみなし、その臓器を攻撃する拒絶反応です。生物は健康を維持するために、異物の侵入を防御するしくみ、つまり免疫反応が発達しています。そのため拒絶反応が起るのです。
 近年この拒絶反応を非常に強く抑える物質が日本の研究者によって発見されました。これがタクロリムス(FK-506)です。

◆臓器移植と免疫
 1984年3月、筑波山で採集した土の中からタクロリムスを作りだす放線菌を発見、ストレプトミセス・ツクバエンシスと命名されました。この微生物が作りだす免疫抑制物質タクロリムスは結晶化され、その化学構造も決定されました。
 タクロリムスは、臓器移植された患者に投与され、優れた作用のあることが証明されました。現在は肝臓、腎、骨髄移植後の拒絶反応の抑制薬として使われています。さらにリウマチやアトピー性皮膚炎への適用も考慮されています。
 このように、新薬の開発は土壌から有効分子の発見、免疫抑制薬としての応用、分子構造の解明など化学、天然物化学、免疫学、生化学の最先端の技術を駆使してなされています。
ストレプトミセズ・ツクバエンシスの電子顕微鏡写真 (藤沢薬品工業(株)提供)

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コレステロールを下げるくすり/プラバスタチン
◆コレステロールと心筋梗塞
 なんの兆候もなく突然、死をもたらす病気が心筋梗塞です。これは、血液中を流れるコレステロールが心臓動脈の血管壁に徐々に付着し、血管が硬くなり詰って心臓に血液が流れなくなるためです。
 このコレステロールは、悪玉コレステロール(LDL:Low Density Lipid)とよばれる血管に付着しやすいリポ蛋白です。欧米では、血液中のコレステロールと心筋梗塞の関係について多くの研究がされ、コレステロールが多いほど心筋梗塞の発生率が高いということが証明されています。コレステロールを下げるために、食事療法や薬物療法がなされていますが、十分な効果がえられていません。

◆HMG-CoA還元酵素
 私たちの体の中には、コレステロールの合成に重要な役割を果すHMG-CoA還元酵素があります。この酵素だけを阻害することによってコレステロールの合成を阻害し、血液中のコレステロールを低下させるくすりが日本で開発されました。これがプラバスタチンです。このくすりは、従来のコレステロール低下薬と違い、少量で血液中のコレステロールを低下さます。
 血液中のコレステロールを低下させるメカニズムは、Goldstein博士とBrown博士がコンパクチンというHMG-CoA還元酵素阻害剤を使って確立しました。両博士はこの業績により1985年ノーベル医学生理学賞を受賞しました。プラバスタチンは臨床的にも血液中のコレステロールを画期的に減少させることが証明され、現在、高コレステロール血症の治療薬として広く世界中で使われています。

◆LDLレセプターを増やすことにより、血中LDLの取り込みを促進します。
肝臓におけるHMG-CoA還元酵素の阻害により、コレステロール合成が低下し、細胞のコレステロール・プールが減少する。
細胞のコレステロール要求性が高まり、LDLレセプター数が増加する。
LDLレセプターを介してコレステロールに富んだ血中LDLの取り込み・代謝が促進され、血中コレステロール値が低下する。

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キラル医薬品/レボフロキサシン
◆細菌感染症撲滅への道
 オフロキサシンは日本で開発され、世界中で使われている代表的なニューキノロン系抗菌薬で、このくすりはグラム陽性菌群、グラム陰性菌群、緑膿菌などに対し広い抗菌スペクトルをもっているばかりでなく、従来の抗生物質に耐性が生じた菌種にも有効です。そのため、細菌感染症の撲滅に大きな期待が寄せられています。
 オフロキサシンの化学構造をみると、不斉炭素を1個もつので、S-(-)体とR-(-)体が1:1含まれるラセミ体です。しかし、その後の立体選択的合成法の研究によってS-(-)体とR-(-)体をそれぞれ別々に合成することができるようになりました。これらの光学活性体の抗菌作用を調べてみると、S-(-)体はラセミ体の約2倍の抗菌作用をもつことがわかりました。そこで、このS-(-)体をレボフロキサシンと名付け、1987年より臨床試験が開始されました。
 臨床試験の結果、レボフロキサシンはオフロキサシンの半量で同等の臨床結果がえられ、副作用の発現率はオフロキサシンに比較して軽減されていることもわかりました。

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徐放性製剤/リュープリン
◆リュープリンの特徴
 リュープリンは、生体内で分解吸収される乳酸・グリコール酸共重合体を基剤とした平均粒子径20μmのマイクロカプセル製剤で、ドラッグデリバリーシステム(DDS)研究の結果誕生した医薬品です。リュープリンは生体内で4週間にわたってゆっくり分解する徐放性製剤で、主薬である酢酸リュープロレリンを一定の濃度に維持します。その結果、血中のテストステロンは、リュープリンの1回目の投与後1〜3日して一過的に上昇しますが、3週間後にはほぼ除睾レベルにまで低下します。そして2回目投与以降、テストステロン濃度は除睾レベル以下に維持されます。従って、1回投与するだけで4週間の持続効果をもっています。現在はアメリカ、イギリス、ドイツをはじめ世界50カ国以上で医薬品として承認され、高い評価を受けています。
 リュープリンは臨床的にも前立腺がんの退縮や排尿障害などの症状を改善することが明らかになり、高齢化がすすむにつれ増加している前立腺がんの治療薬として、各国で繁用されるようになりました。

マイクロカプセルの電子顕微鏡像 (in vitro) (武田薬品工業(株)提供)

◆内分泌療法に新しい道
 ホルモンの分泌を抑制してがんを治療する方法を内分泌療法とよびます。前立腺がんは男性ホルモンの一種であるテストステロン依存性疾患ですが、テストステロンの生成は視床下部から分泌されるLH-RH(黄体ホルモン放出ホルモン)によって制御されています。
 酢酸リュープロレリンは日本で開発されたLH-RH誘導体ですが、はじめて投与した時のごく初期のうちはアゴニスト(作動薬)として下垂体前葉のLH-RH受容体に作用して一過的にLHおよびテストステロンの分泌を促進します。その後は下垂体における反応性の低下を引き起し、LHおよびテストステロンの分泌を抑制し前立腺の縮小をもたらして、前立腺がんに高い奏効率を示すのです。
酢酸リューブロレリンの作用点

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