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会頭メッセージ


日本薬学会の存在感をより高めるために

日本薬学会会頭 奥 直人


 平成29年度より会頭を拝命いたしましたので、これから2年間皆様のご支援の基で、職責を果たしていきたいと考えております。よろしくお願い申し上げます。

 さて、日本薬学会は我が国でも有数の学会の一つであり、1880年の創設以来140年弱の伝統を有する薬学における中核的学術団体です。薬学の共通基盤は「くすり」であり、医薬品の創製、製造、安全性と有効性、供給、適正使用、生体での作用機序など広範に及びます。これらの共通基盤を基とした学術の発展に貢献する学会としての存在感を高めていきたいと考えています。以下に今年度の取り組みについて述べさせていただきました。

 学会誌の発行は学会の重要な仕事です。日本薬学会はChem. Pharm. Bull., Biol. Pharm. Bull. 薬学雑誌の3誌を学術誌として発行し、学会の情報誌としてファルマシアを発行しております。学術誌の活性化は重要であり、質の高い編集体制の構築や、投稿から出版にいたる作業の迅速化等を行ってきました。学術誌等のさらなる充実・発展を目指していきたいと考えています。英文2誌に関しましては、科学技術振興機構(JST)の協力を得て、J-stageを利用した画面インターフェースの開発を促進し、閲覧の利便性向上に取り組んでいます。薬学雑誌は医療薬学分野等の投稿が増え、新たな位置づけが出来つつあると感じています。ファルマシアは、情報誌として充実したコンテンツを引き続き発信していく予定です。

 我が国の将来を担う若手研究者の支援は、重要な課題と位置付けております。本学会では博士課程・博士後期課程を対象とする「長井記念薬学研究奨励事業」が順調に機能しており、今後もその充実を図りたいと考えています。日本薬学会の年会が、大学・大学院における研究成果の発表の場として活用されていることは、喜ばしいことです。年会発表に関わらず薬学系大学に関わる早期から学生会員になるような道筋を提案できればと考えています。

 日本薬学会は、高校生を始めとする若年層を対象に「薬学への招待」を発行してきました。薬の適正使用を実践する薬剤師の役割や、創薬研究の魅力と重要性などの情報に、早期から接することは重要と考えます。日本薬学会では、日本学術振興会が展開している卓越研究成果公開事業を通して、ネット上で薬学研究に関する情報を公開する準備を進めています。このような薬学に関する広報活動には、今後とも注力したいと考えています。

 学会の国際化は薬学領域に限らず重要な課題ですが、特に医薬品・医療機器が世界レベルで開発販売されていることを考えると、ますます重要度は増していると考えています。日本薬学会では、FIP(国際薬学連合)やAFMC(アジア医薬化学連合)、およびドイツ、アメリカ、韓国の薬学会との交流を積極的に行います。年会時に開催される国際創薬シンポジウムは、創薬に関わるアカデミアと企業研究者の連携により充実したものとなっておりますが、引続きその発展を図って行きます。

 日本薬学会には各領域の専門性に基づく部会、および地域に基づく支部があります。部会、支部の活動は日本薬学会の原動力であり、部会、支部および年会における顕彰活動、優秀発表賞や奨励賞は、若手研究者の薬学研究への意欲を高め、同時に日本薬学会への帰属意識を高めるために有効に働いていると考えています。今後も部会および支部活動への支援に力を入れたいと考えています。

 薬学教育は日本薬学会の中でも重要な位置を占めると考えています。これまでも薬学教育モデル・コアカリキュラムの改訂、薬学教育発展に関わるワークショップの企画・開催等を積極的に行ってまいりました。今後も関連する諸団体と力を合わせて薬学教育や薬剤師生涯教育の支援に取組んでまいります。その他、男女共同参画社会の実現に向けた取組み、ホームページの更新、メールマガジン「ファームナビ」による学会情報の配信と共有化などを推進して行く予定です。

 日本薬学会の更なる発展のために、学会員の皆様のご協力とご支援を賜れば幸いと存じます。宜しくお願い申し上げます。