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製剤研究

(株)パウレック 代表取締役社長 高嶋武士

1、製薬研究

合成工程などで生産された薬効を発揮する原薬化合物は、経口投与等により体内の消化器官によって吸収されて薬効を発揮するが、所望の効果を発揮するには原薬化合物がそのまま体内に投与されることはなく、例えば消化液中での溶解性、消化管での吸収性等に関する考察が加えられ、さらに服用性に影響を与える顆粒、錠剤などの剤形についても、安全性や、最大限に効果を発揮できるための考察結果に基づき加工され、いわゆる製剤として患者のもとに届けられており、医薬品が市場に出るための大変重要なステップとして、研究が進められている。

2、製剤プロセス

 一般的な剤形である錠剤の製造工程は、合成工程後に原料を機械的もしくは圧縮空気などを用いて砕く粉砕工程、複数の原料粉体を均一に混ぜ合わせる混合工程、均一な混合状態を保持したまま所望の粒子径の粒子に加工する造粒、粒度分布の微調整を行う整粒工程、湿式造粒などで成型された造粒物を所望の水分値まで乾燥する乾燥工程、造粒物などを錠剤形状に圧縮成型する打錠工程、錠剤に対して、溶出制御、遮光などの機能性皮膜を被覆するコーティング工程といった複数の単位操作で構成される。これらは各単位操作ごとに、最終剤形に適した装置の選定から、装置の操作パラメータが検証され、実生産においては安定した品質が保証されるように、装置および操作に関する厳格な管理が行われている。

特に重要な工程としては原薬化合物と、吸水性、溶解性、崩壊性などを制御するいわゆる賦形剤とを所定の比率で混合し、さらに数百マイクロメータの大きさの粒子形状に加工する造粒工程があり、造粒物はその粒子径分布、見かけ密度、薬物の粒度別含量など詳細な物性制御が求められる。さらにこの造粒物などの表面に対して、溶出制御などを目的とした皮膜を形成するいわゆる粒子コーティング操作も現在の製剤研究においては有効かつ重要な操作として採用されている製剤もある。

また錠剤コーティング工程では、錠剤表面に対して高分子素材を被覆するフィルムコーティングや、糖類を被覆するシュガーコーティング操作があり、製剤の最終工程でもあり慎重な装置の選定と操作因パラメータの設定、さらには長時間にわたるコーティング工程の安定した稼動に関する検討が進められ、実操作が行われている。

これらの製剤プロセスの検討初期は数百グラム程度のバッチスケールで実施されることが多いが、治験薬製造では数十キログラム、実生産では数百キログラムの装置へスケールアップが行われ、不連続体である粉体を取り扱うこと、またその多くがバッチプロセスであることから、このスケールアップに関する検討も難しい点があり、製剤技術研究の重要な研究課題となっている。

3、製剤技術の応用

 これまでにpH依存性皮膜による消化管部位別溶出や、溶出制御性皮膜による持続性溶出などのような体内での吸収特性を制御する製剤操作は広く用いられてきた。しかし、昨今のPLCM(Product Lifecycle Management)の観点や、より患者の服用性を高める目的、さらに近年創出される薬物化合物の極度に低い溶解性を補いつつ、溶出特性および体内吸収特性を制御する製剤技術としては、数~数十マイクロメータに粒子径が調整された、微粒子原薬化合物に対して直接コーティング操作を行う、微粒子コーティング操作も着目され、製剤設計の自由度の拡大に貢献している。この微粒子コーティング技術は従来からの顆粒や、カプセル剤のような剤形での投与以外に、小さな粒子径のコーティング粒子は賦形剤とともに圧縮成型を行っても壊れにくいという利点を応用し、高齢者の服用性の向上や、水なしで服用できる服用性の向上などを目的とし、口腔内で瞬時に崩壊する口腔内崩壊錠(OD錠)の設計にも応用されている。

 これらのように特定の薬効を発揮する薬物化合物に対して、さまざまな加工技術により、製剤としての性能および安全性、さらには服用性についても制御が可能で、まだ開発が待たれているアンメットメディカルニーズへの対応などにも、製剤研究は創薬に関係する大きな可能性と重要性を秘めている。