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トップページ > 創薬と治験 > 「創薬と治験」のコーナー新設に際し 塩野義製薬 執行役員 近藤裕郷

「創薬と治験」のコーナー新設に際し

近藤祐郷(日本薬学会理事) 学会ホームページの刷新について

 今年のノーベル化学賞の受賞者が2名の日本人化学者に決まり、お二人の功績を称えた報道が瞬時に世界中を駆け巡りました。これは、科学技術立国「日本」を、国内外に改めて知らしめる素晴らしい出来事です。受賞対象となった“クロスカップリング反応”は、現在多くの産業に貢献しており、医薬品もその一つです。製薬メーカーに身をおく一人として今回のノーベル化学賞の発表は、私の心に深く刻まれるものとなりました。

 さて、医薬品産業は今後も日本の基幹産業のひとつとして、今まで以上に大きな期待が寄せられています。しかし、一方で研究開発費の高騰が大きな阻害要因となり、製薬メーカー各社が自前主義による研究開発を進めていくことが大変難しくなってきています。この困難な課題を解決するために産学の連携や国家戦略の提言・実行は益々重要なものとなりました。今年6月には、新経済成長戦略が閣議決定されました。医薬品関係では、未承認薬問題の解決に繋がる画期性新薬の創出を加速化し、ドラッグラグを解消するための様々な技術開発に関連する市場開拓が挙げられており、ライフサイエンス関連領域は、今後の日本経済発展に寄与するものとして大きな期待が寄せられています。そのような追い風の中、未充足の医療ニーズにしっかり応えられる大きな帆を皆で力をあわせて作り、持ち前の科学技術を結集させた画期的な新薬をより迅速に、それを必要とする患者さんに届けられたらと思います。例えば、産官学で連携し、もし創薬から治験、治験から上市までの期間を大幅に短縮できる医薬品創生機関が実現できれば、医療ニーズの充足が今以上に短時間で可能になります。日本薬学会で活動している企業人のひとりとして、産と学の橋渡しは重要な使命と心得ており、この新成長戦略は、生産的な研究開発活動を進める上で好機となると考えています。

 かつて、スタンフォード大学の研究室で生まれた遺伝子組換え技術は、ベンチャー企業ジェネンテック社により実用化され、今では様々な病態の解明や新しい治療法の開発に貢献しています。ヒトゲノムの解析が可能になったことで各疾患の病因・病態の解明に加え、オーダーメイド医療ともいわれる個人差に対応した個別化医療や、疾患の経過を正確に予測する先進医療、さらには創薬ターゲットの発見など大きな科学的インパクトをもたらしています。これを機に創薬プラットフォームの大きなパラダイムシフトも起こってきました。最近の抗体医薬や分子標的薬の登場、あるいは、ワクチン治療や核酸医薬などへの注目がそれを示しており、医薬品の研究開発は正に転換期を迎えようとしています。

 今、多くの製薬企業が開発品目の充実を目指して製薬企業間、大学、あるいはバイオベンチャーとの提携を進めています。ベンチャーの裏にあるのは大学などの公的研究機関であり、また、大学発国内ベンチャーの数も1,000社を超えています。政府が進める新成長戦略下におきまして、今後の産官学の連携には、日本経済の成長のみならず、生命科学の発展、さらには国民の健康増進など、さまざまな将来展望に大きな期待がよせられています。

 このような状況の中、日本薬学会は、薬学という学問を通して社会へ貢献する重要な役割を担っています。現役の薬学生の皆さんは勿論、これから薬学を目指そうとする中高生の皆さんにも、日本の将来を担う一人として、「高い志と使命感」を持って薬学を学んでいっていただきたいと思います。そのような願いから、日本薬学会広報委員会がこのコーナーを立ち上げました。お役に立てば幸いです。