厚生労働省の統計資料によるわが国の平均寿命は、平成19年で男性79.19歳、女性85.99歳と世界でも最長です。出生率も世界で低い国の一つとなっています。そのために、あと20年もすれば完全な超高齢化社会が到来するといわれています。こうした中で、死亡者のトップを占めるのがガン、次いで心臓病、脳卒中という生活習慣病です。
人間にとって死は免れないというものの、せめてこの生活習慣病を防ぐ手立てや、万一発病しても、病気の進行を極力抑えるためにはどうすればよいでしょうか。
生活習慣を見直し、過食、過飲、過労を避けること
生活習慣の改善は大切です。中でも食生活の占める位置は様々な意味で大きく、特に今日のような飽食の時代となると抑制を行うことは大変です。ある統計によれば、今の子供の5−15%に高コレステロール値が認められ、また一部の幼児に動脈硬化が見られるということです。こうした事実は、すでに幼少期から生活習慣病が始まっていることを示すものとして、家庭での食事のあり方がいかに重要な意味を持つかをあらわしています。単に塩分や脂肪の摂取を控えればよいということだけではなく、もう一度、家庭と自分自身の食生活や運動なども含めて総合的なチェックすることが必要です。このことがひいては生活習慣病の予防につながるのです。人間の体は、20歳をピークにして40歳ともなれば老化の一途をたどります。しかし、体の老化と反比例するように、社会的な活動が活発化していきます。こうした中で生活習慣を見直すことは、時間的にも気持ちの上でも面倒なことかもしれません。しかし健康な中高年の時代を過ごすためには、ぜひとも必要であることを自覚しなければなりません。
自分の体の状態を知る努力をすること
検査を定期的に継続して受けることで、自分自身の体が示す数値の意味するものを把握することです。検査を継続して受ければ、そこには自然に自分の体全体と内臓器官の機能の変化が浮かび上がってきます。しかし一般的な基準値の範囲だから安心というのではなく、パーソナルな基準値を知ることが大事です。こうした自分だけの基準値を知っておくと、検査の段階で体の異常を早期に発見できるようになります。生活習慣病は初期の段階では格別に自覚症状はあらわれず、また自覚症状が出たときは手遅れということも少なくありません。特に胃がんを始めとするガンは、定期健診や成人病検査によって発見された早期ガンでは、その段階で治療を行えば、ほぼ100%が5年生存率をクリアするという結果が出ています。一般的に、早く発見された病気は時間的にも経済的にも少ないロスで治癒するものですが、生活習慣病もこの例にもれません。
病気と上手に付き合うこと
生活習慣病は不規則な生活に起因すると同時に、老化によっても発病するという側面を持ちます。したがって、生活には十分気をつけていたにもかかわらず発病してしまったというケースも少なくありません。しかし、早く発見して病気と上手に付き合えば、格別な支障をきたすことなく日常生活ができるのも生活習慣病の特徴の一つです。"一病息災"という言葉がありますが、生活習慣病はその典型ともいえるでしょう。たとえば境界域高血圧や境界型糖尿病などの場合は、まだ病気といえるほどではないにしても、放置すれば確実に病気になるいわば病気予備軍ですが、医師の適切な指導を受け続けることによって、一生にわたって進展することなく、全くの健康人として暮らすことができますし、様々な合併症を伴う糖尿病も、やはり医師の管理に従うことで合併症を起こすことなしに健康人と同じように生活ができ、むしろ長寿を保つことすらできるものです。しかしこれも、すべて早期発見が必須条件であり、そのためにも定期健診が欠かせないわけです。生活習慣病が発病した体は、ヒビの入ったガラスといってよく、それだけにそのヒビの状態をよく自覚して、適切な医師の指導を継続して受けることが大切です。
2005.11.19
担当 日本薬学会関東支部市民講演会企画委員 大野知俊 |