水道水によって集団中毒発生
1996年6月に埼玉県越生町で住民の 73% にあたる8,800 名の集団下痢症が発生しました. 患者の便から原虫クリプトスポリジウムが検出され,河川を原水とする町営水道によることがわかりました.塩素消毒を中心とするこれまでの浄水処理では予防効果がないこともわかりました。この事件はわが国での水道水による初めての集団中毒発生例となりました.この原虫は牛,馬,豚などの家畜や野性動物に寄生し,その糞便などによる水源の汚染が下痢症発生の原因になります.感染から発症までの潜伏期間は 4〜10日であり,症状は水様性の下痢,腹痛、発汗で,ときには嘔吐,発熱を伴いますが,出血はみられません.大人では1〜4
週間で自然に治癒しますが,乳幼児,高齢者,免疫力が低下している場合は長期化,重症化することがあります.
クリプトスポリジウム原虫とは
この原虫は,直径約 5 μm
の楕円形で中に湾曲した細長い4個のスポロゾイト(胞子体)をもつオーシスト(
胞嚢体)と呼ばれるものがあり,外側は無色で平滑な厚い壁で保護されています.感染性を示すのはオーシストです.原虫には
厚い壁があるために,塩素などの消毒剤に強い抵抗性を示します.消毒するには,塩素では濃度80mg/Lで2
時間,オゾンでは濃度 2.8mg/Lで8分が必要なので,浄水場の通常の塩素処理では死滅させることができません.しかし,熱,冷凍,乾燥には弱い性質をもっています。
感染予防対策はどうするか
厚生労働省では感染予防対策として暫定対策指針によって,浄水場においては水の濁度を
0.1
度以下に保ち,場合によっては膜ろ過処理や紫外線処理を行うことにしております.また,応急対策として,水道水の給水停止,広報,給水管の洗浄などを盛り込んでいます.
家庭では,水道水を1分以上煮沸するか中空糸膜などを用いた浄水器でろ過することによって予防することができます.
( 東京都立衛生研究所 土屋悦輝)
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