日本薬学会からの提言「薬学の展望とロードマップ」について

 国民が現在関心のある事項についてアンケート調査をすると、老若や男女を問わず、必ず健康問題が上位に入る。国民の健康や医療に対する注目度は極めて高く、予防医療の充実や、がん・アルツハイマー病など国民病に対する画期的医薬品の開発が強く待ち望まれている。医薬品の研究開発は、ゲノム創薬・iPS細胞に代表されるような最先端科学と密接に関連していると同時に、生命科学の基礎研究と臨床的・実践的応用研究の両者の進展と連携の基に成立するものであり、更にその活動には長年の年月と巨額の費用がかかることから国家プロジェクトとしての取組みが必要とされている。
 「創薬研究を国家プロジェクトとして推進すべきである」との提言は、日本学術会議からも発信されている。日本学術会議の「学術の大型研究計画検討分科会」では、平成22年3月に【学術の大型施設計画・大規模研究計画−企画・推進策の在り方とマスタープラン策定について−】を取りまとめ、関連する諸官庁および諸団体に公表した。大規模研究計画は、文部科学省の科研費補助金などの既存の予算枠には収まらない、初期投資および運営費等を含め数十億円の多額の経費を必要とする計画を国家プロジェクトとして推進すべきであると提言したものであるが、宇宙科学などを含む43計画の中に「創薬基盤拠点の形成」計画も選定されている。創薬研究の重要性は、本年9月に発表された文部科学省科学技術・学術審議会の作業部会で取りまとめた「学術研究の大型プロジェクトの推進について−学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想「ロードマップ」の策定−」においても、早急に推進すべき課題として述べられている。
 このような状況下、日本薬学会では、国民の最大関心事である健康と医療に関し、薬の有効性と安全性の科学である「薬学」の立場に基づいた社会への貢献について討議を行うため、会頭直属の組織として『将来展望委員会』を設置した。この委員会では、大学教員・製薬企業に所属する者等を委員として、1年以上にわたり日本の創薬研究や薬学における課題について討議してきた。今回この議論に基づき、国への提言と学術・研究の将来展望を示す冊子を作成した。本書はT「薬を創る」U「薬を正しく使う」V「薬科学者を育てる」の3章から成り、明日の薬学に対する期待と要求に関する将来展望を明示すると同時に、日本学術会議で取り上げられた計画である「創薬基盤拠点の形成」を詳細かつ具体的に示したものである。
 日本薬学会は、国民の健康を守り、病に苦しむ人々を救うことに向けて「情熱」を持って、会員一同日夜取組んでいる。それと同時に創薬研究や薬の適正使用に向けて「高い志」と「使命感」を持った人材の育成を行っている。
 今回、日本薬学会で作成した本書が、国の生命科学、特に創薬研究の政策立案に役立つことを心から期待している。
 
  平成22年 冬

日本薬学会将来展望委員会




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