核内動態制御遺伝子治療用DNAの創製と難治性疼痛治療薬創製へのチャレンジ

 -「第3回次世代を担う若手医療薬科学シンポジウム」から特別講演2題 -
 
 遺伝子治療用DNAの創製を目指し、核内動態制御が可能となりつつある。新薬の開発に努力する一方で、国が既に承認した医薬品の中から、薬理学的基礎データを基にして新しい創薬シーズを探索しようとする試み「エコファーマ」も始まっている。
 特別講演1は、北海道大学大学院先端生命科学研究院准教授の紙谷浩之先生により「核内動態制御を可能とする遺伝子治療用DNAの創製」という演題で行われた。先生は、まず、遺伝子治療用DNAが体内動態・細胞内動態だけではなく核内動態をも制御する必要性を具体的なデータを示して述べられた1) 。その後、核内動態データに基づいて、ヒストンとの結合の制御や配列特異的人工転写因子による自己活性化システムに関する研究について、わかりやすく紹介された。また、変異した遺伝子の配列を正常配列に戻す遺伝子修復法についても詳細を示され、これらの研究をとおして、遺伝子治療の実用化を目指し、新しい薬剤学の構築にチャレンジしながら研究されていることも紹介された。
 特別講演2は、九州大学大学院薬学研究院教授の井上和秀先生による「モルヒネも効きにくい難治性疼痛治療薬創製へのチャレンジ」である。世の中にはモルヒネなどの麻薬性鎮痛薬でさえも効かない痛みに苦しんでいる患者さんが多数おり、神経因性疼痛はその代表である。メカニズムが分かっていないため有効な薬は無いが、井上先生は、神経因性疼痛モデル動物では脊髄ミクログリアが非常に活性化し、アデノシン3リン酸などをアゴニストとするATP受容体の仲間P2X4がそこで異常に発現増加していること、そしてP2X4の刺激が激痛を引き起こすことを発見した2)。P2X4やP2Y12受容体ブロッカーは、すぐれた神経因性疼痛治療薬となることを示した。新薬の開発に努力する一方で、「エコファーマ」の考えに基づき、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬、SSRIの一部に著明なP2X4アンタゴニスト作用や鎮痛作用を持つことも示された。
 二つの特別講演は,それぞれの講演者のお人柄とその内容により聴衆に深い感動を与えた。
1) Ochiai H. et al., Gene Therapy, 14:1152-1159 (2007).
2) Tsuda M. et al., Nature, 424:778-783(2003).

本シンポジウムは平成21年11月14-15日、九州大学病院地区(コラボステーションI)にて開催。

第3回次世代を担う若手医療薬科学シンポジウム実行委員長 
大戸茂弘(九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野)




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