明らかにされてきたニコチンの血管作用

 タバコの主成分のニコチンは,喫煙によって肺から吸収され血液中を循環する. ニコチンでよく知られているのは実験動物に静注すると血圧上昇が起こることである.この作用は自律神経を介したもので, 交感神経節のニコチン性受容体を刺激し交感神経の興奮を起こす.しかし,ニコチンは血管に直接作用させると血管を開く(弛緩)作用があり, 最近,その仕組みがわかってきている.脳の血管(豚,猫,犬)では,ニコチンによって血管弛緩が起こる. この作用を起こすには血管を取り巻く神経が必要で,その神経は一酸化窒素(NO)を神経伝達物質とする. ニコチンはこの神経に働きNOを遊離して血管弛緩を起こす.一方,末梢血管,特に内臓血管の腸間膜動脈(ラット)では, ニコチンが作用する神経はカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を伝達物質とする感覚神経である.さらに, ニコチンの血管弛緩作用には交感神経の存在が必要で,その仕組みはかなり複雑である.しかし, ニコチンの血管平滑筋細胞に対する直接作用はほとんどない.以上のように,最近の研究で明らかにされてきたことは, ニコチンは血管の動きを調節する神経に働いて血管弛緩を起こすので, 必ずしも巷で言われるような血管に対して悪者ではないかもしれないようである.ただし,喫煙が健康に害を与えることには変わりない.

 

岡山大学大学院自然科学研究科 川崎 博己

 




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