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過去のハイライト

 新薬は治療技術としての新たな選択肢であり、様々な研究開発活動を通じてなされる新薬創出の最終的な目標は、患者さんを苦しみから解放することだと思います。新薬の創出は、今まで治療法がなく苦しんでいた患者さんの症状緩和・治癒を可能とし、健康な生活や命を守ることが出来る大変すばらしいことです。このページは、アカデミアで基礎研究をされている多くの方々が御覧になられていると伺っておりますが、日々の基礎研究の成果が実を結び、新薬となって患者さんへ届くということをイメージして研究に取り組んで頂いているものと思います。世界中で多くの患者さんが、一日でも早い新薬の登場を待ち望んでおられます。

   日本の製薬産業は、江戸時代に大阪道修町で始まった薬問屋が発祥であり、当時は西洋薬の輸入販売と生薬・漢方薬などの製造販売をしていましたが、製造業の近代化と共に、自ら研究開発を行う体制を整える様になっていきました。新薬開発志向型企業の団体である私たち日本製薬工業協会(以下、製薬協)に所属する企業は、現在70社となっております。
 新薬を創出できる国は限られており、欧米先進諸国以外では日本だけです。日本の新薬創出数は、アメリカ、イギリスに次ぐ第3位で、世界で販売されている上位200品目のうち約10%が日本発であり、日本だけでなく世界の人々の健康にも貢献しています。
 また、政府は「ライフイノベーションによる健康大国戦略」を新成長戦略の大きな柱と位置づけ、医療イノベーションを推進し、国際的に高い競争力をもつ製薬産業を育成することをうたっています。国土が狭く資源も限られた日本が継続的に経済成長を続けていくためには、知的所有権に根ざした産業の育成が必須であり、製薬産業が正にそれに該当する代表的産業であると言えます。我々は、イノベーションを実現することで、その期待に応え、基幹産業として日本を牽引する役割を果たしていかなければなりません。

 現在、製薬産業は、様々な難題に直面しています。
 まず、対象疾病の変化です。以前は、高血圧、脂質異常症等の慢性疾患を対象とした、いわゆるブロックバスターと呼ばれる大型製品を創出することが新薬開発の流れでしたが、最近は、未だ有効な治療法がないアンメット・メディカル・ニーズに対応する方向に変化しています。これらの中には、患者数が少ないために、研究開発を進めること自体が難しく、また販売後の投資回収が期待出来ない疾病が多数存在します。逆に患者数が多い、例えば、各種癌やアルツハイマー病などの中枢神経系疾患に対する研究開発においては、疾病の全容が未だ解明されていないために薬効評価の方法論も確立していないなどの困難さがあることに加え、企業間競争も激しく、多大な投資を必要とするために、体力のある企業のみが参入できる状況となりつつあります。
 また、世界的に医療費抑制施策として後発医薬品の使用が推進されており、後発医薬品が発売されると新薬は後発医薬品に置き換えられてしまうというのが現実です。したがって、新薬開発志向型企業は、後発医薬品が発売されるまでの間に、新薬の開発投資を回収し、得られた収益を次の新薬の開発へ投資して、継続的に新薬を開発していかなければなりません。
 このように製薬産業は、研究開発投資の効率性が悪化している中で、投資回収の期間は限定され、新たな新薬を開発しなければ市場からの退場を余儀なくされるという非常に厳しい状況に晒されており、こうした研究開発サイクルを継続して回せる体力のある企業と、それ以外の企業との差別化が始まっています。

   創薬には、約9~17年の年月と数百億から一千億円を超える多額の研究開発費を必要とし、その成功確率は約3万分の1と言われていますが、年々、成功確率が低くなる一方であり、製薬企業単独での創薬は困難な状況となってきています。実際に、世界的メガファーマの新薬の約半分がバイオベンチャーからの導入であり、アカデミアからの導入も増加傾向にあります。一方、日本においては、製薬企業と、バイオベンチャーやアカデミアとの連携がなされてはいるものの、未だ十分とはいえない状況です。
 海外に比べて日本は、基礎分野における薬学・医学レベルは非常に高いにもかかわらず、それらの成果を製品化することには長けていないと言わざるを得ません。その要因は、アカデミアにおける基礎研究と製薬産業の創薬研究とがかみ合っていないことや、その間を取り持つシステムの構築が出来ていないこと、また、優秀な研究者は多いものの交流がなく、夫々のステージで孤立してしまっていることなどが考えられます。私たちライフサイエンスに関わる人間は、日本発の創薬が出来る効率的な環境を作っていくために、今一度改めて考える時期に来ているのではないでしょうか。

   私たち製薬協は、前述のような状況を改善し、日本における創薬環境を整備していくため、イノベーション施策の司令塔機能の強化、各省庁の枠を超えてのライフサイエンス関連予算の一本化など、イノベーションの推進に重要な施策の実現をこれまで以上に強く訴えています。特に、政府主宰の医療イノベーション会議への積極的な働きかけを通して産官学連携によるオールジャパン体制での革新的新薬の創出を推進していきたいと考えています。さらに、イノベーションの結果生み出された新薬の価値が、適正に評価される薬価制度である「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」の本格実施と恒久化の実現に向けた取組みも継続していきます。これらの活動を通して、革新的で有用性の高い医薬品の創出と製薬産業の健全な発展を目指し、わが国における基幹産業の一翼を担うべく更に邁進していきたいと思います。