トップページ > 今月のハイライト >過去のハイライト

過去のハイライト

 日本薬学会は1880年(明治13年)に創設された歴史ある学会で、医薬品のみならず、国民の保険医療衛生面における安全・安心にかかわる研究者、技術者、薬剤師、関連企業等が会員となっています。本学会は、学会誌の発行、シンポジウムや講演会の開催などを通して情報発信し、学会員相互の情報交換等を通して、我が国の薬学の発展に大きく寄与してきました。年会は学会が主催する最大のイベントであり、日本薬学会第131年会が、2011年3月28日(月)~31日(木)の4日間、静岡市で開催されることは、準備するものとして大変喜ばしく思っています。静岡での開催は、年2回薬学大会が行われていた1962年の第82年会(第15回薬学大会)に次いで開催された第16回薬学大会(秋季の学術大会)以来49年ぶりとなります。本年会に関する詳細はホームページをご覧頂ければ幸いです。2010年度は、薬学教育改革における6年制教育の導入により、各大学では5年次生を迎え、また大学院学生の定員が減少し始めた年でもあります。本稿では、年会の意義について、大学人の立場から薬学教育改革との関連を基に考えを述べたいと思います。

 年会では薬学教育と研究にかかわる大学の教員、大学院・学部学生、製薬および関連企業関係者、病院および薬局薬剤師や医療関係者などが一堂に会します。それぞれの研究者、技術者、薬剤師にとって、専門とする分野の学会や研究会は多くあると思いますが、薬学に携わる者には、日本薬学会はホームグラウンドとして所属するべき学会との位置付けが重要です。この認識の基に、年会で「くすり」「薬学」というアイデンティティーを共有しつつ「薬学」に関わる全ての分野の関係者が集い、情報を共有することに意義があると考えます。

 次に薬学生と日本薬学会との関わりについて述べます。2万人の日本薬学会会員のうち、学生会員は2-3千人に過ぎません。しかし学生会員の学会有料参加者も例年2-3千人あり、学生会員イコール年会参加者とも見受けられます。学生の新入会者はこれまで毎年1千人を超えます。すなわち大学院や学部学生の多くが薬学会に発表・参加するために学会員となるという構図が描けます。年会のための入会としても、会員に送付される学会誌「ファルマシア」は、情報誌として、薬学生としてのアイデンティティーの醸成に寄与しています。

 薬学教育改革により大学院学生数の減少は避けられませんが、薬科学を基盤とする大学院学生、および今後開設される薬科学博士後期課程、薬学博士課程の大学院学生は、「薬学」の大学院学生である以上、年会での発表を益々盛んにして頂かなければなりません。

 新たに薬学生の大半を占めることとなった6年制学科の学生にとって、研究できる期間は、修士課程の学生よりは大幅に短縮されます。しかしながら問題解決能力醸成のための卒業研究は、学士力構築に頗る重要であり、分野別評価でもこの点が重視されています。6年制学科の学生にも学術としての薬学への帰属意識を高め、積極的な年会参加を期待します。研究期間が十分に確保できない大学においても学会への参加は貴重な経験であり、年会発表を卒業研究の一環に位置づけることにより、学生のインセンティブに繋げて頂ければと考えます。年会への参加は新知見の理解に加え、プレゼンテーション・コミュニケーション能力の向上に繋がり、関連企業研究者や医療関係者の意見が聞ける貴重な機会となります。学生の勉学意欲向上のために、早い学年の段階から学会や学術活動について学生に周知することは教育効果が大きいと考えます。

 将来を担う年代層への啓蒙も、我が国の科学・薬学の発展には重要です。岡山年会に次いで、第131年会でも高校生シンポジウムを企画しました。早期から学会を体験し、優秀な人材に薬学に対する興味を持って頂く仕組み作りは重要です。

 関連企業研究者・技術者の方々にあっては、競争激化により、発表が難しくなっておられると存じます。しかしながら次世代人材育成のためにも、企業からの発表が増え続けることを願っています。近年の医療薬学関連の発表増加は今後の薬学会像を造る上で喜ばしいことだと思います。薬剤師等による医療現場に直結した研究成果発表は、医療の発展や知的基盤の充実に加え、研究マインドを有する薬剤師像を社会に発信し、生涯教育を遂行する上で不可欠のものと思います。本年会では東海3公立大学連携による地域薬剤師リカレント教育モデルの総括シンポジウムも企画されています。

年会では、多くの特別講演やシンポジウムが用意されています。第一線で活躍する著名な研究者による特別講演、質の高いシンポジウム等は、参加者の情報収集や知的基盤の充実のみならず、次世代を担う若手研究者・技術者・薬剤師や将来を担う学生等のモチベーションアップに繋がり、我が国における将来の科学技術・学術の発展性を高めるものと考えています。

 今後の薬学の発展のためにも、本年会が皆様のご参加、ご協力の基に成功することを期待しています。