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今月の薬草
サネブトナツメ
Zizyphus jujuba Miller var. spinosa Hu ex H.F.Chou ( クロウメモドキ科 )
サネブトナツメ Zizyphus jujuba Miller var. spinosa Hu ex H.F.Chou (クロウメモドキ科)花 サネブトナツメ Zizyphus jujuba Miller var. spinosa Hu ex H.F.Chou (クロウメモドキ科)果実
果実

サネブトナツメ Zizyphus jujuba Miller var. spinosa Hu ex H.F.Chou (クロウメモドキ科)ナツメの果実
ナツメの果実
 中国原産の樹高が10mくらいになる落葉高木で、やや乾燥した丘陵地などに生育しています。枝には,葉の基部に生じる托葉が変化した細く鋭い刺があります。葉は互生し,葉身は卵形から卵状楕円形で基部は非対称となり,3本の目立つ葉脈があります。また基部は多くの植物と異なり,左右非対称です。花は淡黄色で集散状につき,初夏に咲きます。果実はナツメ(Zizyphus jujuba Miller var. inermis Rehder)と比較し,小さくてやや球状となり,秋に赤褐色に熟します。種子は果実の大きさの割に大きく,扁平で楕円状を呈しています。
 和名は果実の果肉が薄く,そのため相対的に種子(核:サネ)の割合が大きく太いことから名づけられました。因みにナツメとは芽生えが大変遅く,初夏になって芽生えることから夏芽の意味があります。薬用には種子を用います。生薬名をサンソウニン(酸棗仁)といい,虚弱体質の改善を目的とした酸棗仁湯や温胆湯,帰脾湯などの漢方処方に配剤されています。生薬名のサンソウニン(酸棗仁)は、果実は酸味があるところから酸味のあるナツメ(棗)という意味で名づけられましたが、じつは薬用に用いる種子には酸味がありません。
 近縁のナツメ(2002年11月を参照)と比べ,果実は小さく,果肉は薄い上に酸味があるため果物としてはあまり利用されません。ところでナツメの学名を見ると、変種名に“inermis ”とあります。この“inermis ”は「刺のない」という意味ですので、ナツメには刺がないと思われている方も多いようです。しかし実際には鋭い刺を生じていますので,学名を命名した際の標本は無刺種であったようです。一方,サネブトナツメは、「刺の多い」という意味の“spinosa”と名付けられています。ナツメと比較して刺が多いからです。日本では棘(いばら)といえば一般的にノイバラを思い浮かべますが,中国においては、棘(いばら)はナツメやサネブトナツメの刺を指しているということです。確かに両種とも,根から生じる芽が新しい株になると,小さな株でも鋭い刺を多数生じているため,付近を歩く際には難儀したのではないでしょうか。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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