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今月の薬草
ウド
Aralia cordata Thunberg ( ウコギ科 )
ウド Aralia cordata Thunberg (ウコギ科)花 ウド Aralia cordata Thunberg (ウコギ科)果実
果実

ウド Aralia cordata Thunberg (ウコギ科)芽生え
芽生え
 東アジアの温帯に分布し,適湿でやや肥沃な各地の山野に生育しています。株全体に特有の芳香があり,食用として栽培されている多年生草本植物です。生育は旺盛,大形で草丈は1.5mくらいになり,茎は太く,やや硬めの毛を生じています。葉は互生し,葉身は二回羽状複葉,各小葉は鋸歯があり卵形で先端が尖り,長い葉柄を生じます。花は同じウコギ科のヤツデに似て淡黄緑色,茎の上部に散形状花序が総状について夏に咲きます。果実は球状,秋に黒紫色に熟します。
 和名の語源は種々あり定かではありませんが,茎は太くなると空洞になり,用材などに利用できないため虚(ウツロ)の転訛,また土中に埋もれていた芽が春に萌芽し,柔らかい芽生えを食用とすることから埋(ウズ)が転訛して名づけられたという説などがあります。薬用には根茎を用い,生薬名をドクカツ(独活)といい,解熱,鎮痛薬とします。また根をワキョウカツ(和羌活)といい,中国原産でセリ科の羌活(Notopterygium incisum Ting ex H. T. Chang)の代用として,感冒や頭痛,関節炎の改善を目的に利用することもあります。
 ウドといえば多くの方々は薬用植物ではなく,山菜や野菜というイメージをお持ちではないでしょうか。芽生えは爽やかな香りと風味があり,昔から山菜として多くの人たちに親しまれてきました。最近は山菜としての需要が高くなりました。そのため市場に出回っているものは,ほとんどが促成栽培されたものです。自然の状態より少し早めに出回り,自然とは縁遠くなった都会の青果店やスーパーの野菜コーナーなどで自然の恵みを演出しています。松尾芭蕉(1644-94)は「雪間より薄紫の芽独活(めうど)かな」と詠み,柔らかく白い毛を生じた薄紫色の芽生えを,春の到来を告げる光景として感動しているように思えます。このようなウドですが、柔らかであった芽生えも,夏を過ぎる頃には茎も太く強固になり,地上部が枯れた冬には一見木本植物のように見えてきます。しかし所詮,草本植物です。「材木」としては活用することはできません。この点を取立てて、図体ばかりでかくて役に立たない例えとして,「ウドの大木,柱にならず」といったことわざが生まれました。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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