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今月の薬草
ロウバイ
Chimonanthus praecox Link. ( ロウバイ科 )
ロウバイ Chimonanthus praecox Link (ロウバイ科)花 ロウバイ Chimonanthus praecox Link (ロウバイ科)実

ロウバイ Chimonanthus praecox Link (ロウバイ科)ソシンロウバイ
ソシンロウバイ
 中国原産の落葉小高木です。日本へは江戸時代の初めに渡来し,冬の寒さや夏の暑さに強く,とても栽培しやすいことから,庭木や公園樹などとして観賞用に植栽されています。樹高は4 mくらいとなり,葉は対生し無毛,葉身は薄い革質で卵形,先端はやや尖っています。花は葉に先立って冬から早春に咲き,上品で甘い芳香を生じます。そのため英名をウインター・スウィート(Winter sweet)といいます。また春の到来を告げるかのように咲くことから,花言葉は「先導」と名づけられました。花は花びらと萼片が区別できず,外側の花被片は淡黄色,内側のそれは紅紫色を呈しています。近縁種のソシンロウバイと大変よく似ているためしばしば混同されますが,外側の花被片だけでなく,内側のそれも淡黄色を呈している点で区別できます。果実は長卵形を呈し,リンゴなどと同じように花床(托)が肥大したもので熟すと木質化します。植物学的には偽果(ぎか)といいます。本来の果実は偽果の中に生じ,濃紫褐色を呈し長楕円形で種子のように見えます。
 和名は漢名の“蝋梅”を音読みしたものです。花を同じ季節に咲く梅に例え,花びらは光沢があるため,蝋細工の様に見えるところから名づけられました。薬用にはつぼみを用います。生薬名をロウバイカ(蝋梅花)といい,頭痛や発熱,口の渇き,多汗などの改善に用います。また蝋梅花には皮膚を再生する効果があり,民間ではごま油に漬けて火傷などに外用します。しかし種子には,弱いながらも中枢神経を興奮させる作用が知られているため,観賞用や薬用という目的もありますが,有毒な樹木として取り扱われています。実際には種子を直接口にすることはほとんどないと思いますが,十分に気を付けていただきたいと思います。
 お花見といえばソメイヨシノをまず思い浮かべますが,花が少ない季節とはいえ冬から早春に咲く花も結構多いものです。例えばこのロウバイの他,ウメやスイセン,マンサク,フクジュソウ,サンシュユなど意外に多くの花があります。桜の花見は見物客も多く,ゆっくりと観賞できる雰囲気のところは少ないようです。しかしロウバイなど冬から早春に咲く花の名所は比較的見物客も少なく,心行くまで観賞できるところが多いように思います。寒い季節ゆえにどうしても暖かい部屋にこもりがちにですが,北風が一休みした日差しの暖かい一日,可憐な花を観賞に出かけてみてはいかがでしょうか。(磯田 進・鳥居塚 和生)

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